多様な働き方

管理職の業務負荷と働き方改革2

職場マネジメント

2024年10月02日 転載元:リクルートマネジメントソリューションズ

管理職の業務負荷と働き方改革2

今、管理職の業務負荷が高いという話をしばしば見聞きします。管理職の大変な状況や管理職になりたい人が多くない状況を称して「管理職は罰ゲーム」といった言葉も出ています。また、弊社の調査でも、人事担当者および管理職層に「会社の組織課題」について尋ねたところ、「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」がそれぞれ第1位でした(人事担当者65.3%、管理職層64.7%)。
前回は、管理職の業務負荷と働き方改革というテーマで、管理職の負荷が高く忙しいことの背景について見てきました。本稿では、管理職の業務負荷軽減にあたり、事前に知っておくと良いことをご紹介します。


目次
  • 管理職の業務負荷軽減のために、業務自体の見直しを視野に入れる /li>
  • 多くの管理職が組織内の業務のムダを認識

管理職の業務負荷軽減のために、業務自体の見直しを視野に入れる

管理職の業務負荷軽減というと、方向性として以下のようなことが思い浮かびます。

1. 業務の代替・補完(技術による代替・補完、管理職の上司による代替・補完、管理職のメンバーによる代替・補完、専門組織など別組織による代替・補完)
2. 業務の平準化
3. 意味付けの変更(ジョブ・クラフティング)
4. 管理職自身のキャパシティの拡大(人材開発)
5. 業務自体の見直し(廃止、軽減)

「1.業務の代替・補完」は、例えば、生成AIによって情報収集や書類作成の時間を軽減したり、専門組織が集中してある業務を行うことで、効率的に業務を行えるようになったりすることもあります。メンバー(部下)に管理職自身の役割の一部を任せることで、メンバーの成長にもつながることもあるでしょう。

「2.業務の平準化」については、業務のムリ・ムラ・ムダでいえば、ムリとムダへの対応として該当します。管理職の負荷が一時的に増すことを避けられますので、その意味では管理職の業務負荷の軽減に寄与するでしょう。

「3.意味付けの変更」とは、業務を行う管理職がその仕事への意味や価値をつけることで、管理職自身が納得感を持って業務を行えるようになったり、業務へのやりがいを見出したりすることを指します。業務そのものを見直すのではなく、業務への認知・見方を見直すことになります。これは、ジョブ・クラフティングとも呼びますが、ジョブ・クラフティングを行うと、仕事のフィット感が上がり、仕事の有意味感や満足感、自己効力感が高まります。

「4.管理職自身のキャパシティの拡大」は、リーダーシップやマネジメント経験を通じて習熟したり、管掌職務についての専門性を磨くことで、管理職自身ができることを増やしたり、効率的・効果的な組織運営ができるようにすることです。

上記1から4は総じて、管理職の物理的または心理的な負荷を軽減するのに寄与するでしょう。一方で、「5.業務自体の見直し(廃止・軽減)」なくしては、管理職の業務負荷を本質的には軽減できないことには留意が必要です。理由は大きく分けて2つあります。

1点目は、上記1から4では、基本的には組織としての業務の総量が変わらないということです。仕事から離れた例え話ですが、家の片づけをしていて、ある部屋にあったものを、隣の部屋に置いただけでは、目の前から荷物はなくなりますが、あまり解決にはなっていません。仕事の場合はさらに、業務が移ることで、どこかに負荷を感じる人が出る場合もあります。また、前回も取り上げたように、管理職は、働き方改革推進の流れで、非管理職の業務を引き受けることにもなりますので、誰かの負荷が増すことで、管理職が別の業務を引き取ることにもなりかねないのです。

2点目は、管理職の業務負荷を、管理職自身の力だけで解決することに無理があるということです。筆者がリクルートワークス研究所で行った「企業のムダ調査」注2によると、管理職がムダを感じる業務は、経営層や上司、メンバー、他部署といった、他の人との関係性で起きていることが多いことが分かりました。これは、前回取り上げたカールソンとスチュワートの研究で明らかになった、「管理者は、多くの人々との接触で時間を費やし、対面でのコミュニケーションを好み、自部署メンバーばかりではなく他部署の人や他社の人、経営の上層部との接触にも多くの時間を割き、活動は小刻みで断片的である」という管理職の行動の特徴からも想像に難くないでしょう。誰かとの関係性で行われていることを、管理職自身の能力拡張や見方の変化だけで対応するのは、いささか無理があるでしょう。

よって、管理職の負荷軽減を図りたい企業や組織の皆さんには、1から4に加えて、「5.業務自体の見直し(廃止、軽減)」も、実施していただきたいと考えます。朗報をお伝えしますと、前述の「企業のムダ調査」において、経営層も管理職も従業員も、企業内の多くのムダを認識しており、かつ、顧客やお客様に影響や迷惑のない範囲のなかで多くのことが見直し可能だと分かりました。

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