3万8千名超が受講。「自分らしさ」に気付く就労支援プログラム『WORK FIT』拡大の理由
2024年10月29日 転載元:Recruit Corporate Blog
2024年7月に法務省と包括連携協定を締結した、リクルートが提供する非営利の就労支援プログラム『WORK FIT』。大学、就労支援機関、児童養護施設、少年院、刑務所などで、累計3万8千人以上が受講しています。さまざまな背景から「働くことに自信がない」「自分に合った仕事が分からない」といった状況にある人たちを支援するこの取り組みを、リクルートはなぜ行っているのでしょうか。プログラム立ち上げからの歴史や、活動を通じて見えてきた社会との対話の重要性について、『WORK FIT』を担当するサステナビリティ推進室の岡田佳恵に聞きました。
学生向けの就労支援が、多様な就労希望者の支援へと発展
― まずは『WORK FIT』について簡単にご紹介ください。
岡田佳恵(以下、岡田):『WORK FIT』は、全ての人が自分らしさを活かして働ける世界を目指して開発された、非営利の就労支援プログラムです。特徴は、自分自身の「好き」や「得意」を起点にして、仕事について考えてみること。小さな成功体験を重ね、一人ひとりの前向きなチャレンジにつながることを目指しています。
― なぜこのプログラムは始まったのでしょうか。
岡田:きっかけは、かつて世界経済が混乱したリーマンショックの影響です。採用市場が一気に冷え込み、そのしわ寄せが就労経験のない若者を直撃しました。働きたくても就職できない学生が増加し、社会問題に。リクルートの人材事業の担当者たちも、就職先が見つからなくて自信を失っている学生の姿を目の当たりにしていました。
創業以来、事業を通じて労働市場に向き合ってきた私たちに何かできることはないのか。検討を重ねるなかで生まれたチャレンジのひとつが『WORK FIT』でした。リクルートが培ってきた就職・採用のノウハウから、「自分の強みや可能性に気付くこと」「自分らしさが活かせる仕事を見つけること」を学びの中心に位置づけ、プログラムを開発。当初は大学生向けに提供を開始したんです。
― 2011年のスタートから、これまでの展開を教えてください。
岡田:立ち上げから翌年の2012年には、働くことに悩みを抱えている若者の支援機関「地域若者サポートステーション(以下、サポステ)」向けのプログラムを開始。2015年には少年院向け、2017年には児童養護施設向けと対象を広げています。2022年には刑務所向け、2023年には保護観察所向けのプログラムもスタートしました。
― そのように対象が広がっているのは、なぜなのでしょうか。
岡田:それぞれの人たちが置かれている状況は異なれど、本質的な課題は共通していたからです。例えば、サポステを訪れる若者には、長期間社会から離れていた人や就職しても長く続けられなかった人などがおり、彼らが抱えている「自分が働けるか自信がない」「自分に何が向いているのか分からない」といった悩みは、就活に苦戦して自信を無くしていた大学生と共通点がありました。
それは少年院や児童養護施設を経験した若者にも言えることで、「自分の可能性を信じられない」「安易な基準で仕事を選び、すぐに嫌になって辞めてしまう」といった特徴も、根本的な課題は同じだったんです。しかし、これは『WORK FIT』をスタートさせた当初から分かっていたわけではありません。活動を続けるなかでいただいた、社会からの声を基に気付いたことでした。
例えば、少年院での提供が始まったのは、サポステ向けのプログラムをたまたま法務省の少年院担当者が知り、「うちでも使えるのではないか」とお声がけいただいたのがきっかけです。そんなふうに、取り組みを通して社会と対話し、私たち自身の可能性に気付かせてもらったから、今の広がりがあると思っています。