ファイナンシャルプランナー
氏家祥美さん
FP事務所ハートマネー代表
セカンドキャリアアドバイザー協会理事
子育て世代に向けた家計相談の他、近頃はリタイアメント層に向けたお金とキャリアのアドバイスも行う。高校生向けの家庭科の教科書で経済パートを執筆するなど金融リテラシーの普及にも尽力している。
多様な働き方 「人生100年時代! お金と働く お役立ちコラム」
お金と働くことは、充実した人生を送るために重要であり、密接にかかわっています。働く時間は人生において大きな割合を占めますし、生活していくためにはお金が必要です。 人生100年時代、働く期間はより長くなり、必要なお金も増える傾向にあります。
このシリーズでは、「お金」と「働く」について、それぞれの視点から世代ごとに気を付けるべきポイントやアドバイスを専門家に伺いました。
ファイナンシャルプランナー
氏家祥美さん
FP事務所ハートマネー代表
セカンドキャリアアドバイザー協会理事
子育て世代に向けた家計相談の他、近頃はリタイアメント層に向けたお金とキャリアのアドバイスも行う。高校生向けの家庭科の教科書で経済パートを執筆するなど金融リテラシーの普及にも尽力している。
お金を貯めたいのに貯められない、久しぶりに会った友達との収入や仕事の充実ぶりに差を感じている、先行きが不透明で将来の予測が難しい、そんな不安や不満を抱えている人も多いのではないでしょうか。
ここでは、そんな20代の皆さんと、お金について考えてみたいと思います。
まず20代の皆さんに意識しておいてほしいことは、さまざまなお金のテクニックではなくて、とてもシンプルな3つの黄金ルールです。
3つの観点で、20代にありがちな落とし穴や、今から心がけたいお金の習慣についてお話ししたいと思います。ぜひ最後までお読みください。
まず、人生における夢や希望をライフプランに反映するためには、「働くこと」で収入を得るという経済的な基盤が大切です。
ではまず、20代の平均月収を見てみましょう。
20-24歳の平均月収は21万3100円、25-29歳の平均月収は24万6200円です。
自分の給与と比べてどう感じましたか。
給与は業種や企業規模などによっても差があるので、平均に届かないからといって今の待遇が悪いとは一概に言えません。ただ、給与に対する不満に加えて、今の仕事に興味関心が持てない、能力が発揮できていないという不満もあるのであれば、将来的に転職も選択肢の一つとして考えてもよいかもしれません。
(図表1)「20代の平均月収」
働き方改革やテレワークの推進で副業を解禁する企業が増え、最近では副業をする20代も徐々に増えています。リクルートが行った調査でも、20-24歳で16%、25-29歳で21%の人が「兼業副業実施経験あり」という結果が出ています。
(図表2)「兼業・副業の実施状況(20代)」
副業は収入を増やす手段としても有効ですが、それだけではなく、本業とは異なる分野の経験を積んだり、スキルを磨いたりすることができる働き方として注目されています。社会人経験の浅い20代にとっては、副業が思わぬ形で将来のキャリアにつながることもあるでしょう。
ただし、副業は、会社の就業規則によってはできない可能性もあります。副業が許可されているのか、副業を始めるにあたって必要な手続きはあるか、事前にチェックしておくことが必要です。なお、副業が認められている場合でも、許可されている業務や業種が制限されているケースも多くありますので注意しましょう。
「20代で給料も安いし、お金を貯めるのはまだ先でいいだろう。」そう考えるのも無理はありません。少ない収入でやりくりするのは簡単ではないからです。だからといって、先行き不透明な今の時代、貯蓄ゼロでは、先々への不安もあるでしょう。
そんな20代の皆さんがすぐにできることとしておすすめしたいのが、「支出を見直すこと」です。お金を貯めるためには、出ていくお金を減らすのが重要なポイント。ただし、減らすべきは不必要な支出であって、将来につながる自己投資や人生を楽しむための趣味に使うお金まで減らす必要はありません。
そこで、20代にありがちな無駄遣いを3つ挙げてみました。当てはまるものはあるでしょうか。
現在利用しているサブスクの数をもはや把握していないという人は要注意。月額課金、定額制で、まとまった初期費用がいらない手軽さから、20代、30代といった比較的若い人ほどサブスクを利用する傾向にあります。
例えば、音楽や動画配信サービス、スマホのオプションなどには、初月無料でお試しできるものなど一見お得に思えるものもありますが、実は使わないものや欲しくないものがパッケージで含まれていることも。欲しいものを個別購入した方がかえって安くなることもあります。
あなたが今利用しているサブスクは、本当に月額料金を払うほど、しっかり利用できていますか。入会した当時は利用していたけれど、生活の変化などで最近はあまり使っていないのにお金だけ払い続けているサービスなどはありませんか。クレジットカードの明細や利用履歴をチェックして、利用頻度の少ないものは早めに解約や退会を検討しましょう。
クレジットカードやデビットカード、電子マネー、スマホ決済などのキャッシュレス決済は、ポイントが貯まったり、割引サービスがあったりとメリットもありますが、落とし穴もあります。
特に、キャッシュレス決済を多く利用している人は要注意。決済方法を分散し過ぎると、お金の出入りを把握しにくくなり、知らず知らずのうちに月々の支払額が膨れ上がってしまうことも。また、せっかく貯まったポイントにも気づかず、有効期限切れで無駄にしてしまったという声もよく聞きます。
キャッシュレス決済は、利用頻度の高いものだけに数を絞り、明細をチェックする習慣を身につけましょう。そうすることで、使い過ぎを防ぐことができます。
また、クレジットカードでリボ払いをしている人も要注意です。リボ払いは毎月の返済額を一定に保つことから計画的に返済できるといわれますが、あといくらの返済が残っているのか把握しにくく買い物を積み重ねてしまいがちです。1回だけの利用ではなく、繰り返しリボ払いを利用すると、月々の支払額は変わりませんが、支払いが長期化し最終的な手数料額も高額になります。
例えば、利用残高が50万円ある場合で、月々1万円+手数料(年利18%)のリボ払いをした場合、返済期間は4年2ヵ月(50ヵ月)、総返済額は元金50万円+手数料18万3718円=68万3718円となります※。
※日本クレジットカード協会「リボ払いシミュレーション」で試算。手数料率はカード会社等によっても異なる。
贅沢はしていないのにお金がない、という人に多いのが、コンビニやカフェ通い。コンビニではついつい余計なものまで買いたくなりますし、「ラテマネー」という言葉があるように、毎日の習慣で買うカフェラテ代も積み重なればまとまった金額になります。もし、1杯450円のカフェラテを月に20日飲んでいる人がこのラテ習慣をやめると、1ヵ月のカフェラテ代9000円を貯蓄に回せることになります。
無駄な支出を見直しても、また別のことに使ってしまっては、お金は貯まりません。
金融広報中央委員会の調査(2019年)によれば、20代単身者の45.2%が貯蓄ゼロ。ほぼ2人に1人は蓄えが全くない状態です。20代は資産形成の始め時。まずは貯金の習慣をつけ、ある程度お金が貯まったら、資産運用にもチャレンジしてみましょう。
節約したお金を確実に貯めるためにも、20代から積立で確実に貯める仕組みを作りましょう。 おすすめは、自動積立定期預金です。給与振込口座がある金融機関で自動積立定期預金を申し込めば、毎月決まった日に一定額ずつ定期預金にお金を振り分けられます。申し込みの手続きさえ一度済ませれば以後は手間がかからないので、無理なく続けられます。
また、勤務先に財形貯蓄制度や社内預金制度がある人は、奨励金や金利上乗せなど独自の制度がある場合もあるのでこちらもおすすめです。給与天引きで手間がかからないこと、引き出す時には会社で手続きが必要なことから、確実に貯めやすいところもポイントです。勤務先で制度を確認してみましょう。
20代のうちは、こうした便利な制度を使って確実にお金を貯めていくことが最も重要です。何年かたって貯蓄残高が増えてきたら、お金に働いてもらうことも考えて資産運用を始めましょう。
20代から資産運用を始めるメリットは、時間を味方にできることです。複利運用では、利息が次の利息を生むため、運用期間が長期になるほどお金を効率的に増やす効果が期待できます。
具体的な数字で見ていきましょう。将来1000万円を欲しいと思ったとします。仮に3%の利回りで運用できるとすると、30年の運用期間がある人は、最初に100万円を投資できれば、後は毎月1万3000円の積立投資で、目標の1000万円を達成できることになります。この場合、投資元本の合計は568万円になります。一方、運用期間が10年間の場合は、最初に100万円をまとめて投資しても、毎月6万1800円ずつ積立投資をしないと、目標の1000万円に届きません。この場合の投資元本の合計は、841万6000円になります。目標額や運用利回りが同じでも、運用期間によって必要な元金がずいぶんと異なることがわかります。
(図表3)「将来1000万円を作るために必要な積立投資額」
将来のために時間をかけて行う積立投資の方法としては、税制が優遇されているつみたてNISAやiDeCoがあります。また、勤務先に企業型確定拠出年金の制度がある人は、将来の退職金原資の運用先を自分で選択しているはずです。運用の成果が将来の退職金額を左右することになるので、よく考えて運用先を選びましょう。
ただし、投資には値動きのリスクがあります。預貯金のように元本保証ではないため、元本割れの可能性もあります。一獲千金を狙わず、少額ずつ積立投資をしていく中で、価格変動に慣れていく必要があります。投資はすぐに使わない余裕資金の範囲内で、時間をかけて行うことが重要です。ネット証券などでは、投資初心者に向けたオンラインセミナーなども無料開催しているので、投資に興味を持ったら受講してみるといいでしょう。
お金を貯めるための近道はありません。働いて収入を得ること、無駄な支出をなくすこと、早めの積立貯蓄や資産運用の検討、これらを一つずつ実践していくことが将来につながります。
まずは目の前の仕事にしっかりと取り組み、どこの会社でも役に立つポータブルスキルを身につけましょう。また、転職や副業などで収入を増やす道を考える方法もあります。あせらず、今できることから始めてみましょう。
「仕事選びに失敗した」「年収が少なすぎて、将来が不安」「この先のキャリアプランが描けない」
そんな悩みを持つ20代へ、今から始められる自分に合ったキャリアの見つけ方について、ベテランキャリアアドバイザーに話を伺いました。
「想像していた仕事や職場と違った」「ここでは将来のキャリアが描けない」。そんな想いを抱え、新卒での仕事選びに失敗してしまったと感じている方もいるのではないでしょうか。私のところにも、入社1年目、2年目の方々が多く転職相談に訪れます。
新卒での会社選びで失敗する原因の一つが、就職活動の際に親をはじめとした周囲の年長者のアドバイスを聞き過ぎてしまい、自分の意思とはズレた決断をしてしまったというもの。年長者の皆さんも善意でアドバイスをしてくれるものの、彼らが新卒で入社した時代とは大きく環境が変わっており、今の20代が置かれた状況とはマッチしないということが往々にしてあります。
例えばよく耳にするのが、安定した業界だと薦められて入社したものの、実際は縮小傾向で将来性が見いだせないケース。また、女性にありがちなのが親の勧めで地域総合職を選び地元に戻ったものの、仕事内容は総合職と変わらないのに給与が大きく異なり、不満を抱えているケース。
自分で考え抜いた上での選択であればまだしも、人の意見や情報で決めてしまった場合は他責にしやすく、入社後に後悔が生まれやすいという傾向もあります。
キャリアを描く上で最も大切なことは「自分にとって何が良いか」であり、その価値観は人それぞれです。ただ、20代のうちから自分が本当にやりたいことや描きたいキャリアがはっきりと見えている人は少ないのが現状です。私のところに相談に来た20代の人からもそうした悩みをよく聞きますが、私は「今やりたいことが見つかっていなくても、無理やり作る必要はない」とアドバイスしています。社会は複雑化しており、若いうちから明確にキャリアを描くというのは非常に困難なこと。社会に出てさまざまな仕事を経験し、多くの人と出会うことで、徐々に自身の中でやりたいことが見えてくる。20代はまだ社会人のスタート地点。キャリアはこの先長く続いていくわけですから、20代をかけて自分のキャリアイメージを形成していくくらいの時間軸でよいのではないでしょうか。
自分の「キャリアの可能性」の探し方としては、次の2つをおすすめします。
1つ目は、友人とキャリアについて話してみることです。社会に出て数年も経つと友人たちのキャリアにも幅が出てきます。彼らがどの業界で、どういう仕事をしていて、その仕事にどんな魅力を感じているのか。そしてこれからのキャリアパスをどう描いているのかを話すことで、これからのキャリアを考えるヒントが得られるかもしれません。
2つ目は、転職エージェントなど専門家に相談してみることです。実際、私のところにも今すぐ転職は考えていないけれど、自分の市場価値を知りたくて相談に来る人も多くいます。自分ひとりで考えているのではなく、いろいろな人とキャリアについての話をしながら自分に合った仕事を見つけ、自分らしいキャリアを描いていっていただければと思います。
「仕事を選ぶ時、何を重視したらいいですか?」という質問もよく受けますが、答えは「人それぞれ」です。 お金重視の人もいれば、やりがい重視の人もいるでしょう。また、ワークライフバランスという言葉がありますが、ライフをメインにして、ワークは少なくしたいという方もいるかもしれませんし、結婚するまではワーク100%で、家族ができたらワークの比率を下げたいという方もいるでしょう。
まずは今の自分や未来の自分に合う働き方や仕事は何なのか、ぜひ一度じっくりと考え、探し始めてみませんか。ここでは、そんな20代の仕事選びのアドバイスとして、以下の5つを挙げたいと思います。
転職をする際は、現状に不満があるという理由から転職をするケースがほとんどです。しかし嫌なことを解消したいというのはあくまで転職のきっかけであり、それだけを目的として転職すると将来のキャリアにつながりにくい可能性があります。仕事選びにおいては、「楽しく取り組めそう」「成長できそう」「次はこんなことを実現してみたい」といったポジティブな要素を軸にすると、自分にとってもプラスになると思います。
もちろん先のことはわかりませんが、同じ会社で定年まで勤める可能性は今後どんどん低くなるでしょう。例えばA社に転職したとして、何年か経験を積んだ後には、どんなキャリアの選択肢があるのか、どういうキャリアパスが描けるのか、そこまで考えておくことが大切です。転職先の選択肢が複数あったとして、入社時の給与が5万円高いからといった近視眼的なところにとらわれ過ぎず、数年後の人生やキャリアをぜひ考えてみてください。A社は入社時の給与が一番高かったとしても、3年後、5年後にマネージャーになった時の給与はB社の方が高いといったこともあります。給与だけでなく、どんな経験やキャリアが積めるのか、その後はどんな転職の可能性があるのか、ぜひ中長期的な視野で検討してみてください。
人は周囲にいる人たちの考え方に影響を受けやすいものです。転職先にはどういう人たちがいるのか、どんな影響や刺激を受けるのか、それによってその後の選択肢が変わることもよくあることです。先日も、大手企業間で転職した安定志向の20代男性が、転職した先の職場環境の影響で、1年で退職をして起業したという話を聞きました。人との出会いは人生への影響力が大きく、その人の思考や価値観を変える可能性を秘めています。どういう環境に身を置きたいのかという観点も大切にしてみてください。転職活動でそこまで見極めるのは難しいかもしれませんが、面接官の雰囲気から感じ取ったり、希望すれば先輩社員を紹介してくれるケースもありますので、リクエストしてみるのもありかもしれません。
長い目で見れば、リスクヘッジし過ぎることはリスクでしかありません。失敗から学べることは大きいというのは事実で、大切なのはそれをどう乗り越えるのかということです。もちろん人それぞれではありますが、年齢とともに背負うものが大きくなる傾向があり、リスクを取ることはだんだん難しくなってきます。その点、フットワークの軽さは20代ならではの利点であり、チャレンジがしやすい状況といえるのではないでしょうか?先ほどお伝えした20代で起業した方の事例では、先輩の起業家たちが彼の挑戦をあたたかく見守っていて、「もし失敗したらうちで雇うよ」「次を紹介するよ」と声をかけているようです。これはこの挑戦が彼の成長にプラスになっているからこそで、特殊な例ではありますが、安定志向にとらわれ過ぎず、思い切って挑戦してみることで将来の可能性も広がり、自身もワクワクできるのではないでしょうか。
最初にお伝えしたとおり年長者の言うことが必ずしも正しいわけではなく、むしろそれが間違っていた場合、他責にしてしまうことがよくあります。しかし、自分の選んだ道であれば、それがハッピーになるように自分自身で努力をするもの。一般論はあくまで一般論として、正しい道を選ぼうとするのではなく、自分の選んだ道を正解にしていく努力をしていきましょう。ご自身の人生をどう歩んでいきたいのか考え、自分なりの道を見つけていってください。