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【2022年10月社会保険制度改正】扶養の壁はどう変わる?パートタイムの働き方は? ~30-40代の「お金」と「働く」

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2022年09月28日

【2022年10月社会保険制度改正】扶養の壁はどう変わる?パートタイムの働き方は?  ~30-40代の「お金」と「働く」

お金と働くことは、充実した人生を送るために重要であり、密接にかかわっています。働く時間は人生において大きな割合を占めますし、生活していくためにはお金が必要です。 人生100年時代、働く期間はより長くなり、必要なお金も増える傾向にあります。
このシリーズでは、「お金」と「働く」について、それぞれの視点から世代ごとに気を付けるべきポイントやアドバイスを専門家に伺いました。


〈30-40代×お金〉ファイナンシャルプランナーの氏家さんに聞いてきました!

ファイナンシャルプランナー氏家祥美さん

ファイナンシャルプランナー
氏家祥美さん

FP事務所ハートマネー代表
セカンドキャリアアドバイザー協会理事
子育て世代に向けた家計相談の他、近頃はリタイアメント層に向けたお金とキャリアのアドバイスも行う。高校生向けの家庭科の教科書で経済パートを執筆するなど金融リテラシーの普及にも尽力している。

子育て世代では、これまで子育てに専念していたママも、少しでも家計の助けになればとパートなどの短時間勤務から仕事を再開するケースも多いと思います。

中でも、扶養範囲内で働くことを意識してパートで働いているママたちにとって、103万円の所得税の壁、106万円・130万円の社会保険の壁など、扶養の壁は非常にわかりにくい!

「自分が気にしないといけない壁はどれなのか?」「扶養範囲内で働くことが本当にいいのか?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

今回は、このような扶養の壁について、できるだけわかりやすく説明していきます。


「106万円の壁」はどう変わる?2022年10月からの社会保険の適用範囲拡大とは

106万円の壁

2022年10月、パートなどの短時間で働く人に対して社会保険の適用範囲が広がります。この制度改正で変わるのは、「106万円の壁」です。

まず、現状(2022年9月時点)の「106万円の壁」を見てみましょう。

「106万円の壁」とは、社会保険に関する壁です。パートで働く人は、以下の表に当てはまる場合、年収が106万円以上になると、勤務先の社会保険に加入して自分の給与から社会保険料を負担することになります。

この「106万円の壁」に関して、2022年10月に社会保険の適用範囲が広がります。

「106万円の壁」は、これまで従業員数が「501人以上」の会社が対象でしたが、10月以降は「101人以上」の企業に広がります。雇用期間についても「1年以上」だったのが「2ヵ月以上」に短縮されます。この改正によって、これまで社会保険の加入対象から外れていたパートやアルバイトでも勤務先の社会保険に加入する人が増えていきます。

(図表1)「106万円の壁の対象」106万円の壁の対象


「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」の違いと考え方

ここまでは、社会保険の適用範囲として「106万円の壁」の話をしましたが、「扶養範囲内で働く」といったときによく出てくるのが「103万円の壁」や「130万円の壁」です。それぞれの税金や社会保険料の負担について確認しておきましょう。

103万円の壁106万円の壁130万円の壁

「103万円の壁」

「103万円の壁」は所得税の壁です。年収が103万円を超えると所得税がかかり始めます。一方で、扶養する側(夫)は引き続き配偶者特別控除が利用できるため税金が増えることはありません。ただし、扶養する側(夫)の勤務先から家族手当や配偶者手当を受け取っている場合には、103万円の壁を超えることで手当の対象から外れる可能性がありますので、あらかじめ勤務先に確認しておきましょう。

「130万円の壁」

「130万円の壁」は社会保険の扶養の壁です。年収が130万円(月額10万8000円)を超えると、会社員や公務員等として働く配偶者の社会保険の扶養からはずれます。そのため、自身の勤務先の厚生年金や健康保険に加入するか、それができない場合には国民年金や国民健康保険に加入することになります。このように、扶養の壁を超えることで、社会保険料の負担が一気に増えるため、手取りが減ることになります。

扶養の範囲内で働きたい人が意識する壁は?

年収と支払う税金や社会保険料について、まとめると以下の表のようになります。

2022年10月以降は、従業員101人以上の会社で働いている場合、年収が106万円以上あれば社会保険に加入するようになります。さらに2024年にはその対象が、従業員数51人以上の会社に広がる予定です。配偶者の扶養の範囲内で働きたい人は、103万円の壁に続いて、106万円の壁を意識する必要性が高まってきています。

(図表2)「年収による税・社会保険料の負担」税・社会保険料の負担

扶養内パートとして社会保険料を負担することなく働いてきた人にとって、106万円の壁を超えて自分の社会保険に加入することは社会保険料を負担することになり、手取りの減少につながります。ただし、自分の社会保険に加入することは、老後の年金額が増える、障害年金や遺族年金の対象になる、病気やケガで働けないときには傷病手当金が支給される、産休中には出産手当金が支給されるなど、多くのメリットがあることも知っておきましょう。


社会保険に加入しても、手取り収入を減らしたくない!手取りをキープするにはどうしたらいい?

これからの働き方

今回の改正で、勤め先が社会保険の加入対象になった場合、これまで扶養内パートとして働いてきた人はこれからの働き方をどのように考えたらいいのでしょうか。

106万円の壁を超えて、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料といったいわゆる社会保険料を負担するようになると、手取りはどの程度変化するのでしょうか。年収106万円、120万円、150万円でそれぞれ社会保険料を負担することになった場合の手取り額を比較してみましょう。


(図表3)「年収による税・社会保険料と将来増える厚生年金額」税・社会保険料と年金額

以上はあくまでも概算ですが、例えば年収120万円の場合、年間16万円以上の社会保険料を支払うことになり、手取りは約103万円になります。

一見、年収120万円で働いても、年収103万円の扶養内で働くのと年間手取り額が変わらないようにみえますが、社会保険料を自分自身で支払うことはデメリットばかりではありません。年収120万円で今後10年間社会保険料を支払った場合、老後に受け取る年金額が毎年6万円ずつ増え、増えた年金を一生涯受け取ることができます。

また他にも、障害年金や遺族年金の対象になる、病気やケガで働けないときには傷病手当金が支給されるなどのメリットも大きいため、目先の収入額だけにとらわれず働き方を考えてみましょう。


今後、扶養の壁は縮小傾向。今は扶養内で働いていても、その先について考えていきましょう

「今は子育てを優先して仕事を短時間にとどめたい」という人にとって、社会保険の扶養内で働くことは賢い選択といえます。しかし、今回の改正で、社会保険加入の対象が従業員101人以上の会社に拡大し、さらに2024年には51人以上に拡大することが予定されていることからもわかるように、今後、扶養の壁は縮小していく傾向にあります。パートやアルバイトなどの非正社員も含めてより多くの人が、自分で社会保険に加入することがあたりまえになっていくでしょう。

子育て期間は人生のごく一部に過ぎません。子育て期の数年間は、扶養内で働く道を選んでも、タイミングが来たら年収的にも大きく飛躍することを目指しましょう。労働時間を増やすだけでなく、派遣社員や契約社員、正社員など雇用形態を変えていくことで、より好条件の仕事を見つけることも併せて考えていきましょう。


─専門家COLUMN─
〈30-40代×働く〉キャリアの専門家に聞いてきました!

キャリア専門家

「働くなら扶養内がお得ってホント?」「今までと同じ働き方でいいのかな?」今回の社会保険制度の改正は、自分らしい働き方を考えるチャンス。あなたに合った仕事と出会うために今からできることについてキャリアの専門家に話を伺いました。

勤務時間とお給料のバランスで悩んでいるママは、職場の上司や人事に相談して、一緒にベストな働き方を探してみるのもあり!?


「今回の制度改正で手取りが減っちゃうってホントなの?」「今までの働き方だと社会保険を自分で払わなくてはいけない!?」と不安になっているママたちは、「お給料が減るくらいなら、働く時間を短くして、扶養の範囲内で働こうかなぁ」「今までと同じお給料はキープしたいから、働く時間を増やすしかないけど、できるかどうか不安」など、制度改正により自分にどのような影響があるのかを正確に理解しないまま、悩み始めているのではないでしょうか。

そんなママたちには、職場の上司や、会社の人事などに相談してみることをおすすめします。「扶養範囲内にとどまりたいから就業時間を短くしよう」と安易に考えるのではなく、「手取りを維持したい」「3年後にはこんな働き方がしたい」など、できる・できないは別として、まずは相談してみてはいかがでしょうか。「迷惑になるんじゃないか」と遠慮しなくても大丈夫です。人手不足で悩む多くの会社にとって、今活躍している人材の勤務時間が減ることは大きな損失なため、会社側も前向きに対処したいと考えているはずです。

職場の上司と一緒に、勤務時間と年収のシミュレーションを立ててみることで見えてくることもあるでしょう。また、リーダー業務などを追加して時給を上げる方向で頑張るという道も見つかるかもしれません。 大切なのは、自分の意思や優先順位を明確にすることです。勤務時間や出勤日数は今のままでなければ難しいのか、今後はどのように働きたいと思っているのか、ぜひ一度自分の中で整理した上で相談してみてください。

いずれ仕事を再開したいと思っているママは、ブランク期間をできるだけ短くしたほうがいい


いずれは働きたいと思っているものの、今は仕事をしていないママには、ご自身のためにもブランク期間をできるだけ短くすることをおすすめします。会社側が採用する上でブランク期間の長さを懸念する可能性もありますし、何よりも個人にとってブランク期間が長ければ長いほど、自分自身に対する自信が失われてしまい、意欲が低下する傾向があるからです。なんらかの資格を取得してから復職しようと考える方もいますが、資格取得を目指すうちにブランク期間はどんどん延びてしまうことも。大切なのは、できるだけ早く、限られた時間でもいいので、社会に関わっておくことです。時間的制約がある中でも、お金をもらって仕事をするという経験を維持し続けることが、将来のキャリアにもつながっていくのです。

復職するママの多くが苦労するのは、働くことでの生活習慣の変化だそうです。これまでの育児中心で時間を組み立てていた生活から、いきなり会社のスケジュールに合わせて働くことを求められるようになります。ブランクが長いほど、この生活リズムの変化に慣れるのに時間がかかるため、まずは短い時間でもいいので働き始めましょう。ブランクを短くすることで、状況変化への対応力や調整力、仕事における人との上手な関わり方といったスキルを維持できます。

また、ブランク期間があって復職するのが不安というママも多くいらっしゃいますが、実は家事や子育ての経験は、資格よりも活かせるスペックです。

1つ事例を紹介しますと、子育てによるブランク後、ある飲食チェーンで働き、そこでリーダー職にキャリアアップした女性がいます。彼女が評価されている理由は、学生アルバイトをマネジメントする力が非常に優れていることのようです。周りからは「学生はドタキャンで休むし、あまり言うことを聞かないし、よくうまく付き合えますね」と言われるそうですが、感情の赴くままに動く子どもと向き合ってきた彼女にとって、相手が自分の思い通りにならないのはあたりまえのこと。子育てにより、さまざまな年齢層や立場の人とうまく付き合う柔軟性が養われ、それが彼女の強みとなっています。このように子育ての経験を活かして、マネジメントの道で活躍するママもいるのです。

ブランク期間はできるだけ短い方がいいですが、たとえブランク期間があったとしても子育ての経験が仕事に活かせる事例もありますので、自信を持って復職することをおすすめします。

自分らしい働き方を見つけるのに大切なのは、「自分」を知ること、「相手(会社)」を知ること、「相場」を知ること


では、いざ仕事を探そうと思った時に何を意識したらよいでしょうか。意識してほしいポイントは以下の3つになります。

1. 「自分」の適職や仕事選びの優先順位を知る

あなたの中で仕事をする上での優先順位は明確になっているでしょうか。「いい仕事があればやりたい」という声をよく聞きますが、その「いい仕事」とは具体的に何を指しているのでしょうか。大体は勤務時間、勤務地、賃金、仕事内容を挙げますが、それぞれについてより具体的な内容で、絶対譲れない条件と、あればベターな条件を分けて考えてみてください。

また、「どんな仕事が自分に合っているのかわからない」という相談を受けることがありますが、そんなママに私がお勧めしているのが短期のスポットバイトです。フルタイムでの契約や1年間での契約となると「続けていけるのか」「自分に向いていなかったらどうしよう」という不安がつきまとい、検討に時間がかかってしまうもの。そうであれば、気軽に短期バイトをしてみたらいいのです。食わず嫌いをせず、まずやってみることで「飲食の仕事って面白い」「介護職はやりがいがある」などの発見をして、そこから自身の適職が見つかり、キャリアが広がっていくこともあります。

ある50代の女性の話ですが、最初は午前の時間だけを使って、介護施設で朝ごはんの準備と掃除をするパートを始めました。主婦の延長線でできる仕事として選んだのですが、実際に介護施設で働くうちに、介護職の方々のイキイキと働く姿や「ありがとう」と喜ばれる仕事に魅力を感じて、ヘルパーの資格を取得。その後はなんと栄養士と調理師の資格にチャレンジして職域を広げ、パートを始めて8年後にはケアマネージャーの資格も取得したのです。彼女は定年の70歳まで、自身の価値を発揮しながら働くという道を見つけることができました。決して何歳からでも遅くないという事例でもあります。

2.「相手(企業)」を知りたいという気持ちを持つ

採用時の面接で遠慮して質問ができないという方もいますが、残業時間や福利厚生などの自分自身の中で優先順位の高い条件について確認しないことは、自分だけでなく相手(企業)にとってもマイナスです。ただ質問するときに大切なのは、自分の希望を伝えるだけでなく、企業側の希望も聞く意識をもって面接に臨むこと。できるだけ長く続けたいという前向きなスタンスをベースに、「保育園のお迎えがあるので、定時で上がらないといけないのですが、本当に残業はないのでしょうか?」などオープンマインドで質問をすれば、企業側もオープンに答えてくれるはずです。

3. フラットな視点で世の中の「相場」を広く知る

少し難しく感じるかもしれませんが、世の中にはどんな仕事があって、それぞれにいくらの値段(給与)がついていて、何が期待されているのかを知るのは大切なことです。復職時に事務職を希望するママが圧倒的に多いのですが、有効求人倍率が他の職種に比べて低いのも事務職の特徴です。さらに新卒の若手やバリバリ働いている人たちなどライバルが多数いますので、どうしても採用の確率が低くなりがちです。一方で接客業や販売職、介護職など有効求人倍率の高い職種や業界の場合、人材不足ゆえに働き方改革や条件改善などがすすみ、高い賃金や働きやすい職場環境になっているケースも増えています。

「〇〇職=給与が安い、△△職=体力が必要できつい」と思い込んでいる職種はありませんか?フラットな視点で相場を見ながら検討してみてください。

2021年4月の高年齢者雇用安定法の改正により、事業主には「65歳までの雇用確保の義務」に加え、「70歳までの就業機会の確保の努力義務」が追加されました。もし70歳まで働くとすると、今40代であればこれから30年近く働くという可能性もあります。これだけの期間があれば、技術を習得したり、経験を積んでキャリアアップしたりすることもできるのです。新しいことを始めるのは不安というママもいるかもしれませんが、あなたにはまだまだ大きな伸びしろがあり、自分らしい働き方を見つけて輝くチャンスが広がっているのです。


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