ママになっても、自分らしく働きたい! そんなキャリア志向が高く、働く意欲が強い女性たちをサポートするために「東京ワーキングママ大学」を立ち上げ、女性が妊娠・出産で仕事をあきらめなくてもよい社会を目指す大洲さん。仕事も育児も一人で抱え込まず、周囲を巻き込んでいくことが重要と話す大洲さんに両立のヒケツを伺いました。

妊娠・出産で安易に会社を辞めないで

2013年、アベノミクスの成長戦略の要として「女性の活躍」が掲げられました。 これを機に「働くママ」がよりフォーカスされ、女性が働く環境は次第に整ってきています。 特に、妊娠、出産、育児を経た後も働き続けるためのノウハウなどをまとめた情報サイトや、家事や育児をサポートするサービスは、ここ数年で随分増えました。

しかし、その一方で、職場環境の整備は、企業の規模や姿勢によってまちまちです。 特に、地方転勤がある仕事に就いた女性は、単身赴任で働くことが難しいため、妊娠を機に仕事を辞めるケースも多々あります。 もちろん、中には会社を辞めても転職でキャリアアップできる方もいますが、ほとんどの場合、再就職での年収ダウンは避けられないのが現実。 キャリア形成の上でも圧倒的に不利な状況に追い込まれてしまうので、退職は慎重に決断するべきでしょう。

妊娠・出産で安易に会社を辞めないで

上司には具体的な「成果」アピールを

ワーキングママの中には職場での自身の評価に悩む方も多いようです。 いまだに労働時間が評価対象となっている企業も多く「勤務時間は短くても、効率的に仕事を進めているのに努力が評価されない...」 と不満を感じる方も大勢います。これは、企業の制度の問題でもあるのですが、上司とのコミュニケーションの取り方で解決できることもあります。

例えば評価面談等の場面で、自分の頑張りの「成果」を、営業成績など具体的な数字やデータでアピールするのもひとつの手。 また、どんな目標を達成すればさらに上の評価をしてもらえるのか、上司と話し合い、一緒にゴール設定してみるのもよいでしょう。 なんとなく雰囲気で評価されてしまうのを避けるためには、上司の目線も意識しながらアピールしていくことが求められます。

欠勤リスクはあらかじめ上司にインプットして

職場での評価についての悩みは、労働時間だけではありません。職場復帰したばかりの頃は、子どもも0〜1歳児のため病気にかかりやすく、 早退・欠勤のリスクも高くなります。すると上司からの評価も「なんとなく、休んでばかりだな」と悪くなりがち。

しかし、子どもが病気がちなのは一時期だけで、子どもが成長するとともに欠勤リスクは下がっていきます。 「1年くらいは子どもの急な病気でご迷惑をかけるかもしれませんが、徐々に減っていきますので...」と一言伝えるだけで、 上司からの見え方も大きく変わってきます。

欠勤リスクはあらかじめ上司にインプットして

どんな働き方をしたいのか伝えることが大切

そもそも、全ての上司が子育ての経験があるわけでも、ワーキングママをマネジメントした経験があるわけでもありません。 上司も、どうサポートするのがベストなのか、実はわからないことも。

以前、あるワーキングママが、育休を経て職場に復帰したところ、新聞記事のクリッピングなど、新入社員が行うような仕事内容にレベルを落とされてしまって、 モチベーションが下がったというエピソードがありました。上司が、ワーキングママの負担を軽くしようと配慮したことが、 ワーキングママが求めていた働き方と食い違っていたのです。 ですから、自分が何に挑戦したいのか、どんな働き方をしたいのかは、ぜひ、しっかり上司に伝えてみてください。

仕事には「プロ意識」を持って挑んでほしい

ただし、ここで注意してほしいのが、職場に甘えて、お願いばかりするのではなく、働く側も「成果を残す」ということにシビアにならなくてはいけないということ。 プロ意識を持たなければならないのです。ここで言うプロ意識とは、何も仕事を一人で抱え込めということではありません。

求められるのは、結果を残すため、周囲を巻き込みプロジェクトを完遂する力。 子どもが生まれる前は、自分さえ無理して頑張っていればなんとかなったと思います。 ちょっと風邪を引いても、熱があっても、頑張ればなんとかなる。でも子どもがいると、そうはいきません。 そこで求められるのが「周囲に助けてもらう力」です。

仕事には「プロ意識」を持って挑んでほしい

いざというときに仕事をお願いできる関係性を築いておこう

例えば、上司が一人で仕事を抱え込んでいては、チーム全体のパフォーマンスは上がりませんよね。 仕事とメンバーの相性を見極め、仕事を割り振り、チーム一丸となって仕事に取り組むことで、初めて、成果を残すことができます。

これと同じことがワーキングママの働き方にも言えるのです。時短勤務で復帰した場合、退社は15時や16時など明らかに他の人よりも早い時間。 残業ができた頃と比べると4〜5時間も勤務時間は減ることに。そうなると、「いかに仕事を他の人に頼めるか」がとても重要になってきます。 だからこそ、周囲に「助けてあげたい」と思ってもらえるよう、コミュニケーションにも注意が必要です。 折をみて周囲に家族の話をするだけでも、子どもに親近感を持ってもらえますよ。

また、日頃から感謝の言葉を伝えたり、お世話になった人にランチをごちそうしたりと、仕事をお願いしやすい関係性を築いておきたいですね。 いざというときに助けてくれる、あなたの味方をつくっておきましょう。

いざというときに仕事をお願いできる関係性を築いておこう

「いざというとき」のセーフティネットは万全に

味方づくりが大切なのは子育ても同様です。 例えば、重要な会議がある日に子どもが発熱してしまった場合、あなたならどんな手立てを考えられますか?

私だったら、まずプランAとして実家を頼ります。そこがダメならプランBに変更してパートナーに連絡。 そこも厳しければプランCで義理の両親。さらに奥の手として、登録しているベビーシッターやファミリーサポートという手段も用意しています。 プロとして自分の仕事に穴をあけないために、いざというときに頼れるセーフティネットを複数用意しておく。 これも、仕事に対して「プロ意識を持つ」という意味で、とても重要なことだと思います。

家事も一人で抱え込まずに家族を巻き込んで

私の家では家事も分担制。例えば洗濯。帰宅後に洗濯機を回すのは私ですが、洗い終わった洗濯物を干すのはパートナーの役目。 毎日23時、24時に帰ってきますが、帰るなり洗濯機に直行して洗濯物をハンガーにかけています。 そして翌日、乾いた洗濯物を取り込むのは、学校から帰ってきた子どもたちの仕事です。 ぐちゃぐちゃに取り込まれた洗濯物の山は、ふたりでおしゃべりをしながら週末に一緒にたたみます。

全ての家事を一人で抱え込むのは無理があります。このように家族でバトンを渡しながら家事を片付けるのも一つの手。 「どうすれば一人で家事を片付けられるか」と悩むより、「いかに家族を巻き込んで、家事をこなしていくか」に知恵を絞ってみてはいかがでしょうか。

家事も一人で抱え込まずに家族を巻き込んで

これからの時代には新たな女性のリーダー像が必要

一昔前は、女性のリーダー像と言えば、家庭を捨て、仕事に邁進するような人ばかりでした。 しかし、これからの日本には20代、30代の女性が目指したくなるような新たなリーダーが必要だと思うのです。 それは夕方の18時には家族で食卓を囲んでいるような、家庭も大切にしながら、仕事でも大きな成果を挙げられる女性です。

最近では、育児をしながら起業したり、フリーとして働く方も増えています。 確実に女性の働き方の選択肢は広がっています。あなたも、楽しみながら、仕事に、育児に、立ち向かってみてください。

著者プロフィール

※プロフィールは、取材当時のものです。

大洲早生李

一般社団法人日本ワーキングママ協会代表 理事 株式会社グローバルステージ 代表取締役

慶應義塾大学卒業後、日立製作所に入社。営業、宣伝、広報と渡り歩く。4年半の単身赴任生活後、2008年に双子を妊娠。 仕事との両立が難しくなり、やむなく退職。子育てしながら働く社会を変えたいとの思いで、フリーランスを経て2011年にグローバルステージを創業。

2013年9月に一般社団法人日本ワーキングママ協会(東京ワーキングママ大学運営)を立ち上げ。 2015年3月よりグローバルステージの新事業として「グローバルママ研究所」を設立。 2015年秋よりアクセンチュア株式会社との共同で女性からはじめる働き方変革プロジェクト「Work Smarter!」を開始。

東京・大阪・名古屋を出張ベースで飛び回る3児の母。再就職や起業など、ママがセカンドキャリアを築き、能力を発揮できる社会の実現を目指す。

東京ワーキングママ大学 HP

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