十人十色の働き方をご紹介する『COLORS(カラーズ)』。
今回は... 定年退職後、同じ職種で別のメーカーを2社経験し、その後、知人の紹介でグループホームで働くことに。入居者さんの基本的な生活のサポートのほかスポーツの経験も活かし「体操のお兄さん」もしているという伊藤さんのストーリをご紹介します。
家電修理で、グループホームの人気者に。
定年退職後は、同じ職種で別のメーカーを2社経験。2社目を退社後、すぐに働ける仕事を探していた時、知人の紹介で、今のグループホームに出会いました。履歴書をもって面接に行ったら「じゃあ明日から来てね」と、あっというまに決まっちゃったんです。
介護業界の仕事なんて考えたこともなく、分からないことばかりだったので、逆に不安もなかったのかもしれないですね。最初は入居者さんと仲良くなるまで時間もかかりましたが、家電が壊れた時にサッと直してみせたら、一気に人気者になれたことはよく覚えています。こんな意外なところで、メーカー勤務だった経験がいかせるんだなと思いましたね。
体操も、歌謡曲も。全てを学びのきっかけにしたい。
グループホームでは、入居者さんの基本的な生活のサポートをしています。食事やお風呂、トイレのお手伝い。薬を飲むことや水分補給などを行っています。歌を歌ったり、体操をする時間が毎日あり、そこではスポーツの経験をいかして「体操のお兄さん」もしています。自分で考えたプログラムをもとに、みなさんを巻き込んで、歌や体操をガイドする役目です。みなさんが楽しそうに、少しずつ身体を動かしてくれるのが嬉しいです。
私自身、研究者気質と言うのでしょうか。「これはどうなっているんだろう」と考え、探っていくことが、昔から好きなんです。加齢により飲み込む力が落ちるメカニズムを調べたり、健康に関する医学学会に参加してみたり。入居者さんの世代が好きな歌謡曲を探して、ついつい夜中までラジオを聞きつづけてしまうこともあります。さまざまなことが、いつも私の好奇心を刺激してくれる。ここで働くことで、生活に張り合いがでています。
「できない」を責めるより、「できる」でリスペクトしよう。
ここで働くスタッフは私より年下で、主婦の方がほとんど。60歳を過ぎた未経験の私が一人、世代が異なる人の中で働くという環境でした。ですから、「分からなくて当然だ。分かるまで教えてもらおう」という姿勢で積極的に質問し、取り組んでみました。焦らず、丁寧に、と意識することで、できることも増えたと感じています。
一方で他のスタッフの方も、私のようなシニアの未経験者を受け入れるにあたり、意識していることがあるとも聞きました。例えば、未経験の人の「できない」は絶対に否定せず、リスペクトの気持ちをもって接すること。あるいは、時間はかかっても、それぞれの得意・不得意な仕事を見極めて、役割分担をすること。
とくに介護の仕事においては、入居者さんと比較的歳が近いシニア層の方が、気持ちに寄り添えるため、心のケアを、力の要る身体のケアを若年層のスタッフが行うような振り分けをすることも多いです。お互いの苦手なところはお願いし合って、得意なことには感謝し合って。そういうスタッフの姿勢が、入居者さんにとって居心地のよい空間をつくっているんだと思います。
※掲載記事内容は、2019年12月時点のものです。