ファイナンシャルプランナー
氏家祥美さん
女性のためのお金と仕事の相談室「ハートマネー」代表。女性活躍応援FPとして、働き方や夫婦・親子関係も含めたマネーアドバイスが好評。お金・仕事・時間のバランスのとれた幸福度の高い家計を追求。自身も2児の母。
30代後半や40代の高齢出産ではじめて子どもを持つと、若いときよりも精神的にも経済的にも余裕があるなどさまざまなメリットがあります。その一方で、目先のことばかりを考えて、教育や住宅購入、レジャーなどにお金を使いすぎてしまうと、老後資金の貯めどきがないまま老後に突入して後悔する可能性も。今から20年後の将来を見通して、総合的にライフプランを立てていく視点を持つことが大切です。ファイナンシャルプランナーの氏家さんにお話を伺いました。
※記事内の情報は、2021年10月時点の情報です。
ファイナンシャルプランナー
氏家祥美さん
女性のためのお金と仕事の相談室「ハートマネー」代表。女性活躍応援FPとして、働き方や夫婦・親子関係も含めたマネーアドバイスが好評。お金・仕事・時間のバランスのとれた幸福度の高い家計を追求。自身も2児の母。
40代の子育ては、若い世代に比べると「こだわり」が多くなりがちです。
家計相談をしているとよく聞こえてくるのが「子どもが望むならやりたいことを何でもさせてあげたい」「留学でも大学院でも本人が希望したらできる限りいい教育を与えてあげたい」という言葉です。仕事も自分のやりたいことも一通り経験してから授かったかわいいわが子だからこそ、子どもへの愛情も一段と募るのかもしれません。
そのためには幼少時からの教育環境も重要になりますが、40代の子育ての場合、早く出産をした友人やママ友から習い事やお受験の情報なども自然と集まってきたり、仕事で培った情報収集能力を生かして自分から情報にアクセスしたりと、よりいいものを選び抜く機会に恵まれています。
20代で出産した同じ年の子どもを持つ夫婦に比べると体力にはやや不安を感じるものの、経済的にも精神的にもはるかに余裕があるのが40代。貯蓄や年収がそれなりにあることから、家を買おうと思えばローンの審査が通りやすく、お受験をしようと思えば塾代や授業料を出す余裕もあるでしょう。しかし、このような余裕のある暮らしがいつまでも続くと思うのは危険です。40代の子育てがこれからどんな局面を迎えるのかを考えてみましょう。
制度の中には所得制限があるものも。40代子育てでは、年収が高めな傾向があるので、子育て支援制度の恩恵が十分に得られない可能性があります。
例えば、児童手当は0歳から中学校卒業までの子どもがいる世帯に支給されます。支給額は3歳未満が月額1万5000円、3歳以上小学校修了前が1万円(第3子以降は1万5000円)、中学生は1万円のため、全部貯めると約200万円になります。
一方、所得制限の対象家庭の場合、支給額は一律5000円のため、全部貯めても約90万円です。また、児童手当法の改正により、2022年10月からは世帯主の年収が1200万円以上の世帯には児童手当の支給が無くなることが決まっています。
高校進学時には、高等学校就学支援金制度があります。いわゆる高校授業料無償化の制度で、世帯年収が910万円未満の世帯の場合は、公立高校の授業料相当額の11万8800円が支給されます。また、世帯年収が590万円未満で子どもが私立高校に通う場合には、年間最大39万6000円が支給されます。
大学の進学にあたっては、給付型や貸与型を含めてさまざまな奨学金制度が用意されていますが、所得制限が設けられている場合は、基準額以上の所得があると利用できません。年収が高めの家庭は、子育ては自前で行うことを覚悟しておきましょう。
現在45歳のAさんと、現在30歳のBさんは、どちらも3歳の子どもがいて同じ保育園に通っています。この2つの家庭の20年後の家計をイメージしてみましょう。
20年後、2つの家庭の子どもたちは23歳になりました。二人とも大学を卒業して春から社会人になり、子育てもひと段落という状況です。
このとき、Aさんは65歳。子育て終了と同時に退職を迎えることができましたが、もしも子どもが大学受験で浪人したり、留年をしたり、大学院に進学していたら、退職後もまだ教育費を負担する可能性もありました。
退職にあたって勤務先からの退職一時金が出たのが救いですが、住宅ローンの返済もあと何年か残っていますし、これまで全く老後資金を貯めることができなかったので老後資金がとても心配です。
一方のBさんはそのとき50歳。20代で出産したため、若い頃は家計の余裕がなくて大変でしたが、児童手当や奨学金なども利用しながらなんとか大学まで卒業させることができました。
50歳で教育費負担が無くなることで、これから家計は楽になりますし、65歳までは働くつもりなので、住宅ローンの繰り上げ返済をしながら15年かけてゆっくり老後資金を貯めていく予定です。
65歳で子育てが終わる頃、親は何歳になっているでしょうか。30代後半以降に出産をした40代子育て家族の場合、教育費がピークに達する頃に、親の介護が始まっている可能性もあります。
先ほどのAさんの場合には、40代に入ってから住宅を購入しましたが、もともとは定年退職を迎える前に住宅ローンの繰り上げ返済をして、定年退職までにローンを完済する予定でした。
しかし、子どもが高校に進学したタイミングで親の介護が始まったことで、そこからは教育費と介護費用の負担がダブルでやってくることに。住宅ローンの繰り上げ返済も自分たちの老後資金の貯蓄もできないまま、65歳で定年退職を迎えることとなりました。
生命保険文化センターの調査(平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」)によると、介護費用は一時費用が平均69万円、月々の費用が平均7.8万円です。介護期間の平均は54.5ヵ月(4年7ヵ月)ですから、介護期間全体の平均額としては、69万円+7.8万円×54.5ヵ月=494.1万円となります。だいたい500万円と考えておけばいいでしょう。
親自身が介護への備えをしているかによっても負担度は変わってきます。将来的な介護についても親が健康で元気なうちに話し合い、必要度合いによってはマネープランに組み込んでおきましょう。
生きていく中では、たくさんの想定外の出来事があります。特に、これからの30年は、子どものこと、親のこと、自分や家族の健康のこと、仕事のことなど、どこかの場面で「こんなはずではなかった」ということがあるかもしれません。
全ての想定外を見据えて準備をするのは難しくても、何歳のときにどんなことが起こり得るのか年表形式で思い描いてみることで、気づくことはたくさんあります。家計に関することならば、いつどんな費用がどのくらいかかるのか、その貯めどきはいつなのかを把握できれば、これからのお金の使い方や働き方が変わってくるかもしれません。
〈2022年9月30日 更新〉