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【おひとり様の老後を考える】老後資金、親の介護、住宅ローンなど気になる悩みにアドバイス

お金お悩み相談

2021年12月16日 iction!みらい家計シミュレーション

【おひとり様の老後を考える】老後資金、親の介護、住宅ローンなど気になる悩みにアドバイス

アラフォー世代となって、このまま結婚しないで1人かなと思った時に、老後資金がふと心配になった男女。 それぞれ置かれた状況は異なるものの、それぞれの立場で不安や事情を抱えています。身近な人に相談しにくい自分の老後や親の介護などの悩みに、ファイナンシャルプランナーでキャリアコンサルタントでもある氏家さんがお答えします。

ファイナンシャルプランナー氏家祥美さん

ファイナンシャルプランナー
氏家祥美さん

女性のためのお金と仕事の相談室「ハートマネー」代表。女性活躍応援FPとして、働き方や夫婦・親子関係も含めたマネーアドバイスが好評。お金・仕事・時間のバランスのとれた幸福度の高い家計を追求。2児の母。

老後に不安を感じる人は84%。女性の方が強い不安感を抱えている

金融庁の報告書が発端となり話題となった「老後2000万円問題」。人生100年時代の今、多くの人が老後に漠然と不安を抱えているのではないでしょうか。

(公財)生命保険文化センターが行った調査(令和元年度「生活保障に関する調査」)によると、老後生活に対して不安を感じている人の割合は、全体では84.4%。また、女性の方が不安感を感じている人の割合が5%ほど高く、なかでも女性の21.2%が「非常に不安を感じている」と回答しています(図1)。

(図1):質問:あなたは、ご自身の老後生活に対して、どの程度不安を感じていますか。
老後生活における不安の有無

続いて、同調査より、老後生活に対する不安の内容についてみていきましょう。「公的年金だけでは不十分」という回答が82.8%で最も多く、「退職金や企業年金だけでは不十分」という回答が38.8%で3番目に多くなっております(図2)。

(図2)質問:それでは、具体的にどのようなことを不安に思っていますか。
※(図1)の質問で「非常に不安を感じる・不安を感じる・少し不安を感じる」を選択した人に聴取
老後生活における不安の内容

不安の背景として、老後に必要なお金は2000万円というのが独り歩きしているように思いますが、経済的な不安を解消するにはどうしたらよいでしょうか。 本記事では、独身男女の相談を元に、老後生活やこれからの家計について一緒に考えてみたいと思います。

【おひとり様ケース1】独身43歳。親の介護と自分の老後が心配…

Aさん

短大進学と同時に東京に出てきて、一人暮らしを続けているAさん。小さな商社に就職して、事務職として働き続けて20年以上が経ちました。会社の中のことは詳しすぎるほど詳しくなって、「わからないことがあればAさんに聞いて」といわれるくらい、社内で頼りにされる存在で、仕事にやりがいはあまり感じないものの不満も特にありません。

友達や同級生は、ほとんどが結婚し子どもがいます。自分も同じような人生を歩んでいたらどうだったかなと思うこともありますが、自分の時間とお金を自由に使えるおひとり様生活は、自分に合っていて気に入っています。

しかし、最近実家の母親が心配で悩んでいます。今年初めに父親がくも膜下出血で倒れて急逝し、一人暮らしをしている母。体も元気で友人は多いけれど本当は1人で寂しい思いをしていないか、70代になる母をこのまま1人にしておいて大丈夫なのかなど心配事は尽きず、地元に戻り、Uターン転職をするか検討中です。

では、早速Aさんのお悩みに対して、アドバイスしていきたいと思います。

<親の介護:離れて暮らす場合、どうしたらよい?>
母のことを思うと、今の仕事を辞めて、Uターン転職を検討した方がよいのでしょうか。

お母さまは現状、元気で一人暮らしも可能な状況ということですから、今すぐUターン転職を考える必要はないでしょう。まずはAさんご自身の人生を軸に、やりたい仕事をやって、自分の将来のために貯蓄もしておきましょう。

お母さまには、電話やメールなどでまめに連絡をとる、帰省の日数を増やすなどして、コミュニケーションの頻度を上げていきます。また、帰省した際には実家のご近所さんにも顔出しをしてお母さまの様子に変化があったら連絡をもらえるようにお願いしておきましょう。一人暮らしが不安な様子が見られたら、地域包括支援センターに相談をして、介護保険制度などの利用も検討していきましょう。

親の介護は、基本的に親の資金の範囲内でできることを行います。親思いは素晴らしいことですが、Aさんが負担を負いすぎて、ご自身の30年後がままならなくならないように気を付けましょう。

Aさん

<老後資金:独身女性の場合、どれくらいのお金が必要?>
老後に必要なお金は2000万円と聞きましたが、独身女性ですと、実際はどのくらい必要なのでしょうか。

一人暮らしの場合、必要な資金は二人暮らしの7割程度。仮に夫婦で老後資金が2000万円必要だとすると、一人暮らしの場合には、その7割の1400万円程度と思えばよいでしょう。ただし、自分で用意すべき老後資金の必要額は、暮らしによって異なります。公的年金の少ない人や老後も家賃の支払いが必要な人はその分、多くの貯えが必要になります。

<老後資金の貯め方:将来に備えるコツ>
独身女性1人で老後資金を貯めるためには、どうしたらよいのでしょうか。 コツや注意すべきことがあれば、教えてください 。

iDeCoやつみたてNISAといった非課税優遇制度のある仕組みを作って投資をしましょう。投資には値動きがありますが、40代前半の人が老後資金を使うのは20年以上先になります。その間、毎月一定額ずつ積立購入をしていく場合、途中の値下がりは安く購入できるチャンスと考えられます。価格変動に一喜一憂せず、積立投資を続けましょう。

もう一つはできるだけ長く働いて収入を確保し、公的年金の受給開始を遅らせることです。年金の受給開始年齢を65歳から70歳まで繰り下げれば、公的年金の受給額を42%増やせます。42%増えた年金額を一生涯受け取ることができるので、長生きリスクの不安解消につながります。

<老後への備え:保険やiDeCoには加入すべき?>
更年期障害など女性特有の病気で働けなくなった場合に備えて、手厚い保険やiDeCoなどを検討した方がよいでしょうか?

独身女性にとって働けないことは大きなリスク。入院時のサポートなども誰かにお願いすることを考えると、一生涯に渡った保障を備えておいた方がいいでしょう。

ただし、保険料負担が重くなって預貯金ができないのでは困ります。保険料がお手頃な掛け捨ての医療保険とがん保険などを商品比較をしたうえで備えたら、あとは緊急予備資金と生活費を預貯金で備え、老後資金はiDeCoやつみたてNISAなどの投資も活用して、目的別に資金準備をしていきましょう。

<おひとり様女性のお金に関する注意点>
そのほか、独身女性がお金の面で早めに意識しておくべきことがあったら教えてください。

平均値で見た時に、女性は男性よりも低収入でありながら男性よりも長生きです。ということは、男性以上に限られた資産の寿命を延ばす工夫が必要になります。

堅実に節約をして貯蓄するだけでなく、早いうちから投資も始めていきましょう。早く始めた方が運用期間が長くなり、経験値も積むことができます。iDeCoやつみたてNISAなどを使って、毎月一定額ずつ投資信託を積立購入していきましょう。

【おひとり様ケース2】退職金がない!定年後まで残る住宅資金や老後資金が心配

Bさん

Bさんは、新卒で入った食品メーカーからの転職を経て、ベンチャー企業で営業として働いています。2年前に食品メーカーを退職したときに、ある程度まとまった退職金が入ったこともあって、最近、35年ローンを組んでマンションを購入しました。

これからも結婚する予定はなく独身貴族を続けるつもりでいますが、「独身ほど老後資金の不足に苦しむ」という話を最近耳にし、自分の老後が気になり始めました。

また、今の仕事はやりがいがあるものの、退職金制度がありません。住宅ローンが70代半ばまで残っていることを考えると、ローンを返済しながら本当にやっていけるのか、その点も気になっています。

<老後資金:退職金がない!40代からの老後資金の貯め方>
私にはいまのところ退職金がありません!老後資金の貯め方や注意しておくべきことがあれば教えてください。

勤務先に退職金がないのであれば、急ピッチで老後資金を貯めていきましょう。これから毎年100万円ずつ貯蓄をしたとしても、60歳までの19年間では1900万円です。現在の貯蓄500万円と合わせて2400万円になります。現在の年収や生活レベルを見る限り、この程度の貯蓄は可能です。

家計簿アプリを使うなどして3カ月間支出を記録しましょう。絶対に減らせない支出、削減可能な支出などを洗い出し、支出を見直していきましょう。毎月の積立は、預貯金と投資を組み合わせて行います。

Bさん

<住宅ローン返済:繰り上げ返済など気を付けるべきこと>
定年後も続く住宅ローンが心配です。ローンの繰り上げ返済や住み替えを考えた方がいい?

貯蓄と並行して繰り上げ返済も行っていきましょう。退職金がない以上、住宅ローンを退職後も残してしまうと、老後の暮らしを圧迫することになるので、定年までの完済を目指します。

ただし、繰り上げ返済貧乏になってしまうのは避けたいところ。購入から10年間に(消費税が10%になった2019年10月以降、一定期間内に購入した人は特例で13年間)※1 ついては、住宅ローン控除が利用できます。年末のローン残高に対して1%の税額控除が受けられるので、金利1%以下で住宅ローンを利用できている人は、この期間については積極的に繰り上げ返済をするのはかえってもったいないことになります。

Bさんは、2年前に住宅を購入したとのことですので、あと8年くらいは繰り上げ返済を急がずに、繰り上げ返済用の資金を貯めておき、10年経過後にローン残高を減らすようにしましょう。

なお、今の仕事を続けていてご両親も元気で暮らせている間は、特に住み替えなどを考える必要はありませんが、定年後もローンが残り負担になるようであれば、自宅を売却して実家に住むことなども検討することになります。

※1 2021年12月時点

<おひとり様のお財布事情:投資と貯蓄の割合について>
投資と貯蓄の割合が3:2。今のままで大丈夫?何かあったとき使えるお金はどれくらい必要ですか?

貯蓄が200万円あるので、半年くらいの生活費は預貯金で持っていることになります。残りの投資については内容次第。投資信託のようなリスク分散されたもので、多少の値動きはあっても解約がいつでもできるものであれば、いまのまま継続して問題はないでしょう。

反対に、個別株などに集中投資していたり、iDeCoのように60歳まで引き出せないものに集中したりしていると、何かあったときに困る可能性があります。その場合は投資先を見直すか、しばらく預貯金を中心に貯めるなどして調整していきましょう。

<親の介護費用:どれくらいのお金が必要?誰が負担する?>
ゆくゆくは親の介護が心配です。介護ってどれくらいお金がかかりますか?

親に介護が必要になった場合の費用は、基本的には親のお金から出していきます。そのための貯えがあるかどうか、親にあらかじめ聞いておきましょう。

生命保険文化センターの調査によると、介護に必要な資金は、住宅改造や介護用ベッドの購入などの一時金が約69万円、1カ月あたりの介護費用が7.8万円で、介護期間は平均54.5カ月です。これらを合計すると、1人につき約500万円が必要ということになります。

親御さんの介護が必要になった場合、費用は基本的には親御さんのお金から出していきます。親御さんの介護費用や生活費が足りないからといって、Bさんがすべて補てんするのは厳しいと思います。Bさん自身の老後資金を考えると同時に、親御さんが元気なうちに、介護に必要な貯えがあるかどうか確認し、老後の資金計画を立ててもらうことが重要でしょう。

また、Bさんのように親御さんと別居している場合、親御さんの介護に直面した際にはお互いの暮らしを維持したままできる介護方法をまずは模索したほうがよいでしょう。兄弟姉妹がいるなら協力して親の介護へ取り組むためにどうしたらよいか早めに話し合っておくことも大切です。介護のために仕事を辞めるという選択は、次の仕事が見つからずに苦労する可能性も高いため、最終手段と思っていた方がよいでしょう。

<おひとり様男性のお金に関する注意点>
そのほか、独身男性がお金の面で早めに意識しておくべきことがあったら教えてください。

日頃の暮らしが贅沢になっていないか確認し、少しずつ暮らしをコンパクトにしていきましょう。外食や中食が多い人は自炊の練習をする、ゴルフなどお金のかかる趣味が多い人はお金のかからない趣味も今のうちに探してみましょう。

また、健康を維持して長く働ける人ほど、老後資金に余裕が生まれます。勤務先の継続雇用制度の有無などを確認して、定年後のセカンドキャリアについても準備を始めていきましょう。

〈2022年9月30日 更新〉

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