ファイナンシャルプランナー
氏家祥美さん
女性のためのお金と仕事の相談室「ハートマネー」代表。女性活躍応援FPとして、働き方や夫婦・親子関係も含めたマネーアドバイスが好評。お金・仕事・時間のバランスのとれた幸福度の高い家計を追求。2児の母。
結婚したいと思っていても、思いがすれ違う男女。お金のことが心配で結婚に踏み切れない男性、理想の条件に合うパートナーが見つからなくて焦る女性。そんな結婚にまつわる男女のお悩みに、ファイナンシャルプランナーでキャリアコンサルタントでもある氏家さんがお答えします。
自分らしく生きつつ、ハッピーな結婚生活を送るためには、お金や仕事とどのように向き合っていけばいいのでしょうか。パートナー選び、仕事、お金について考えるポイントをお伝えします。
ファイナンシャルプランナー
氏家祥美さん
女性のためのお金と仕事の相談室「ハートマネー」代表。女性活躍応援FPとして、働き方や夫婦・親子関係も含めたマネーアドバイスが好評。お金・仕事・時間のバランスのとれた幸福度の高い家計を追求。2児の母。
結婚相手に経済力を求める女性は多いもの。内閣府が行った調査(平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」)によると、将来結婚したいと考える30代の未婚者が結婚相手に求める条件は、グラフのとおり。
価値観が近いこと、一緒にいて楽しいこと、一緒にいて気をつかわないことなどが、男女とも上位に並んでいるものの、女性だけに絞ってみると、「金銭感覚」「経済力がある」といったお金に関わる項目も50%以上となっています。女性の方が「お金」と結婚をシビアに結びつけて考えているようです。
この数字からもみてとれるように、結婚とお金は切っても切れない関係であるといえます。そして、結婚前のカップルや新婚夫婦から聞かれる悩みも、やはり「お金」の問題がとても多いのです。
では、結婚とお金について、男女それぞれ具体的にどんな悩みを抱えているのでしょうか。2人の相談者を例にとり、アドバイスしたいと思います。
社会人生活が10年目にさしかかる32歳の会社員Aさんのお悩みです。
マッチングアプリで出会った彼女とつきあってもうすぐ2年。最近、彼女の方から結婚や将来に関する話をよくされることもあり、結婚のプレッシャーを感じているそうです。
Aさん自身も彼女のことは大好きで、結婚して一緒に暮らしたいと思ってはいるものの、貯金もほとんどなく、結婚をするならお金を貯めてからの方がいいのでは…、自分の今の年収で彼女と楽しい結婚生活がおくれるのか…等々、経済的な自信がないことからプロポーズができないで悩んでいるそうです。
お金のことが心配で、結婚に踏み切れないと心配される方は少なくありません。 1つ1つ解決していきましょう。
Aさんは、これまで友達との交友関係や趣味にお金を惜しまず使ってきたこともあり、現在の貯蓄額は50万円。結婚するならお金も貯めてからの方がいいのではと心配があるそうです。
ゼクシィ「結婚トレンド調査2021」によりますと、挙式、披露宴・ウエディングパーティー総額の平均は292万3,000円。ただし、この金額は新型コロナウィルス感染症の影響で挙式や披露宴を縮小した人が多かった影響もあり、前年の調査と比較して約70万円減少しています。そう考えると、一般的な挙式・披露宴をするには、Aさんの貯蓄だけではあと300万円程足りないと考えられます。
しかし、いまの貯蓄が足りないからといって結婚をあきらめることはありません。挙式や披露宴だって自分たちらしい方法で行うことは可能です。
新郎新婦が、挙式・披露宴にかかる費用を全て負担する必要はないかもしれません。また、親によっては、立派な挙式・披露宴を期待して結婚費用をあらかじめ用意している場合もあります。ご家族からの援助やご祝儀でまかなえる場合も多いので、Aさんの50万円と、パートナーの貯蓄を合わせて、どのくらいの金額を挙式・披露宴に回せるか話し合ってみましょう。
ゲストを多く呼ぶほど、披露宴やパーティーの総額は高くなりがちですが、その分、ご祝儀にも期待ができます。前年の調査と比較して51万円減少していますが、それでもご祝儀の平均は176万8,000円になります。
ただし、会場への支払いが前払いの場合には、当日いただくご祝儀を支払いに充てることは難しいため、自己資金の範囲内で挙式・披露宴を行い、ご祝儀は新生活準備費用に回すと思った方が、無理がないでしょう。
挙式・披露宴は、いつ、どこの会場で、何人で、どのようにやるのかによって費用はずいぶんと変わります。情報収集とアイデアで費用のかけ方についても工夫してみましょう。
Aさんは、結婚したら子どもがほしい、マイホームを購入したいなど、将来について彼女と話をすることもふえてきて、結婚生活を送るには、もう少し年収がないと難しいのでは?年収が上がってから結婚した方がいいのではとも悩んでいるようですね。
自分一人の稼ぎでは、十分な暮らしができないと経済的なプレッシャーを感じている場合には、パートナーと共に働き、共に家事や子育てをすることも考えましょう。共に働いた方が世帯年収を増やせますし、男性が仕事、女性が家事や子育てという枠組みを取り払った方が、夫婦でお互いにリスクヘッジができます。
また、一時的にどちらかが家事や子育てを担うものの、その時期が過ぎたら、また二人で働いたり、その時々で働き方を見直すという方法もあります。
結婚を考え出した時から、夫婦のこれからの働き方をイメージしておくとよいですね。
いまのAさんに特に知っておいてほしいのは、結婚を先延ばしするリスクです。 たしかに今の日本においては、年齢が上がるほど給与が上昇する傾向にあります。しかし、結婚年齢、出産年齢を遅らせるほど、いろんなライフイベントが後倒しになって、定年退職前後にいろんなことが押し寄せます。住宅ローンの返済が定年退職後にも残り、並行して子どもの教育費がかかり、親の介護も始まった……となると、老後資金を貯める余裕がなくなってしまいます。(➡詳しくはこちらの「40代の子育て」記事をご覧ください。)
また女性の視点からみると、結婚を先延ばしすることにより、子どもを授かりにくくなるのではという不安もあります。何歳だから大丈夫というものではありませんが、不妊治療にけっこうなお金を使って取り組んでいる人も実は多いのです。
彼女と結婚したいという気持ちがあるにもかかわらず、ただ漠然とした不安から先延ばししているだけなら、思い切ってその気持ちを彼女に伝えてしまうといいでしょう。一人で悶々と考えているのではなく、早めにお互いの不安や心配ごとを話し合ったうえで、お互いにとってちょうどいい結婚の形やタイミングを見つけていくことが大切なのです。
大学を卒業後に勤めた会社を30歳で退職してアメリカに半年間留学。その後は、大好きなヨガの時間を確保するため、派遣社員として働いているBさんのお悩みです。
最近結婚も真剣に考えはじめ婚活していますが、なかなか理想の相手がみつからないようです。結婚相手には経済力を求め、自分が子どもができて仕事を辞めた場合にも暮らしに困らないよう希望年収は800万円以上。子育てが落ち着いたらヨガのスキルをもうちょっと磨いて、ヨガインストラクターとして、マイペースに働けたらいいなと思っているそうです。
Bさんの同年代で年収800万円を超える人に出会う確率はわずかです。男性の平均年収は30代後半で529万円(国税庁「令和元年度 民間給与実態統計調査」より)。40代前半で582万円、40代後半で629万円と年齢とともに平均額も上昇傾向にありますが、共に暮らせる期間がその分短くなってしまいます。
仮に、年収500万円くらいの方と結婚をした場合、Bさんがいまの年収300万円程度を稼ぎ続けることを加えると、世帯年収800万円も実現できるようになります。
結婚生活は、相手と価値観が近いことや、一緒にいて楽しいことなどがやはり欠かせません。お金以外の暮らしの部分も含めて、どんな人とどんな暮らしがしたいのかを、まず考えてみましょう。
Bさんは、子育てのために自分が仕事を辞めた場合の不安から、年収800万円の男性を探しているとのことですが、まずは自分の結婚後、出産後の働き方についてじっくり考えてみましょう。
図にあるように、共働き世帯数は年々増加傾向にあります。ここから結婚や子育てを理由に、働くことをやめるというケースが減っているといえます。 では、次に「夫婦ともにフルタイム」という割合を見てみましょう。
子育て世代より、子育てが少し落ち着いたと思われる45-54歳の方が「夫婦ともにフルタイム」の割合が少し多いことが分かります。 子どもが幼い時期に子どもとの時間をゆっくり取りたい場合には、仕事を辞めるのではなく、仕事のペースを落とすという選択もあります。そうすれば、子どもが成長し、手がかからなくなった時にブランクなくフルタイムの仕事に戻ることができます。
また、やはり出産後はいったん仕事を辞めたい場合には、子どもを授かる前の共働き期間に、意識的に貯蓄しておきましょう。そして、「子どもが小学生になったら仕事を再開する」というように、仕事復帰のタイミングをあらかじめイメージしておき、その時に向けて資格を取ったり、隙間時間を生かして経験を積んだりと準備をしておくと仕事復帰がスムーズに行きやすくなります。
今は、リモート勤務OKだったり、時短勤務が可能であったりと、子育てしながら働きやすい会社や仕事も増えつつあります。 夫婦でお互いのキャリアプランを共有化して、協力し合っていけるといいですね。
結婚を考えるお二人のお悩みを見てきましたが、結婚に関する考え方も今はずいぶん変わってきています。
男性が家計を支えて、女性が家事を担う。そんな固定観念は過去のものです。そんな固定観念に縛られた結果、結婚相手が見つかりにくくなったり、みすみす結婚の機会を逃すのは勿体ないことです。
それに、男性が仕事、女性が家事子育てときっちり役割分担をするよりも、お互いに仕事や家事、子育てを担っている夫婦の方が、忙しくはありますが、お互いを理解し合うことができ、協力しやすくなります。
まずは結婚相手に求める条件を一度横に置き、自分の将来の希望を具体的に洗い出してみましょう。自分がそもそも本当に結婚したいのか、結婚を希望する場合には、自分の仕事はどうしたいのか、子どもの有無や日々の暮らしについても、具体的に考えてみるといいでしょう。
〈2022年9月30日 更新〉