ファイナンシャルプランナー
氏家祥美さん
女性のためのお金と仕事の相談室「ハートマネー」代表。女性活躍応援FPとして、働き方や夫婦・親子関係も含めたマネーアドバイスが好評。お金・仕事・時間のバランスのとれた幸福度の高い家計を追求。自身も2児の母。
子どもにどんな教育を受けさせたいか、夫婦の意見は一致していますか?夫婦のどちらか一方が中学受験を必要な教育だと思ってがんばっていても、もう一方がさほど必要性を感じていなければ、夫婦のイライラは募るばかりです。
中学受験に向けた準備として塾通いを始めるタイミングは小学4年生がもっとも一般的だと言われています。だからでしょうか、中学受験が多い地域では、小学3年生にもなると塾の話題が多くなります。
中学受験は将来的なマネープランにも大きくかかわる出来事です。今回は、そんな塾通いを考え始めたタイミングで読んでおいてほしい中学受験にまつわる「お金」について、ファイナンシャルプランナーの氏家さんが、徹底解説します。ぜひ、夫婦間、親子間でよく話し合って、今後の方向性を定めるヒントにしてください!
ファイナンシャルプランナー
氏家祥美さん
女性のためのお金と仕事の相談室「ハートマネー」代表。女性活躍応援FPとして、働き方や夫婦・親子関係も含めたマネーアドバイスが好評。お金・仕事・時間のバランスのとれた幸福度の高い家計を追求。自身も2児の母。
文部科学省「平成30年度 子供の学習費調査」によると、全国の中学生のうち、私立中学に通う子どもの割合は7.4%です。これは、中学生の14人に1人が私立中学に通っているということです。
この数字を皆さんが住んでいる地域と比べてみて、どう感じましたか?
数多くの私立中学がある都市部で教育にお金をかけられる家庭が多く存在する地域には、クラスの過半数が私立中学を受験するところがあります。周りに合わせていたら成り行きで私立中学受験をすることになっていたというご家庭がこうした地域には見られます。
一方で、日本全国を見渡せば、クラス全員が地元の中学に進学するところもたくさんあります。こうした地域ではよほどの関心がない限り、私立中学を選択することはないでしょう。このように、中学受験をするかしないかは、住んでいる地域の影響を強く受けます。
ちなみに、
私立小学校で学ぶ小学生は全国で1.2%、83人に1人の割合です。
私立高校で学ぶ高校生は全国で33.0%、3人に1人の割合です。
高校に比べると、小学校や中学校では私立に通う子の割合が少ないことに気が付きます。
日本では小中学校が義務教育となっているため、公立小学校、公立中学校を選択する限りは、無試験で授業料の負担なく進学できます。そんな中で受験を乗り越えて私立中学に進学するということは、それだけ教育にこだわりを持ち、そこにかけるお金もある家庭だと考えられます。
私立小学校は83人に1人、私立中学校は14人に1人ということで、かなり特別なものであることがわかりましたが、これは学校教育費にも表れています。
以下の表は、1年あたりの学校教育費(授業料、教材費、修学旅行代の集金など)を公立と私立に分けて一覧にしたものです。
公立小学校は年間6万3102円ですが、私立小学校では年間90万4164円がかかっており、その差は14.3倍になっています。
公立中学校は年間13万8961円ですが、私立中学校では年間107万1438円がかかっており、その差は7.7倍になっています。
公立高校は年間28万487円ですが、私立高校では年間71万9051円かかっており、その差は2.6倍となっています。
小学校や中学校の公私の差に比べると、高校の公私の差が小さいように感じます。
高校の場合、3人に1人が進学しており、いろんな家庭の子が通えるように、私立高校の学校教育費が抑えられていると考えられます。
私立中高一貫校に進学したら、授業料はかかっても高校受験がいらない分、塾代が安くなるはず。私立中学を選んだ人からは時折そんな声が聞こえてきます。実際はどうなのでしょうか。
以下の表は、1年あたりの学校外活動費(塾代、習い事代など)を公立と私立に分けて一覧にしたものです。
中学校に関して言えば、私立中学の学校外活動費は公立の1.1倍で、あまり公立・私立差がないことに気が付きます。
公立中学校に通う子は、高校受験を控えているため塾に通う子が多いのか、公立でも塾代などに年間30万円超がかかっています。
それに対して、私立の中高一貫校の場合には、塾代がかからない中学生も多いのですが、進度の速い学校の授業についていくために塾に通う子もいます。そのため、平均すると公立中学校と同程度の金額になっています。
高校の場合には、私立高校の塾代などは公立高校の1.4倍となっています。高校の場合、大学進学を希望して一般受験をする子は塾や予備校の費用がかかりますが、大学進学を希望しない子や推薦入学の子にはあまり塾代等はかからないため、平均額が低めとなっています。
大学進学を希望するかどうかが、高校生の教育費の大きな分かれ目となるでしょう。
ここで、中学受験にかかる費用についてもう少し詳しく考えてみましょう。
東京都が発表した「令和3年度 都内私立中学校の学費の状況」によると、都内の私立中学校の初年度納付金は平均で97万176円でした。初年度納入金は、毎年支払う「授業料」「その他」に加えて、入学時だけ支払う「入学金」と「施設費」も加算されています。
このほか、受験時に支払う検定料が学校によって異なりますが、2万円から3万円のところが多くなっており、平均では2万3365円です。仮に4-5校受験するとした場合、受験費用だけで10-12万円程度がかかることになります。
このほか、中学受験をする多くの子が、中学受験塾に通っています。中学受験塾の費用は、4年生から3年間通った場合で、200-300万円程度がかかります。中学受験を考える場合には塾代も予算を確保しておきましょう。
初年度納付金の金額は、学校によっても大きく異なります。都内の私立中学のうち、金額の高いところ、低いところが公開されているので見てみましょう。私立中学校といえども、どこの学校を選ぶかによって学費に大きな差があることに気が付きます。
大学進学を考える場合には、大学進学までがエスカレーター式で約束された大学の附属中学校かどうかも教育費の大きな分かれ目となります。
有名大学の附属中学校を目指す場合、中学受験は当然厳しいものになりますが、中学校に進学した後は受験勉強に時間を割かれることがありません。
高校や大学の進学時には一定以上の成績がないと進学できなかったり、希望の学部に進学するためには成績上位者である必要があるなど、中学高校に入学した後も学校内の勉強は手を抜けませんが、そこさえクリアできれば大学受験が不要な点は大きなメリットでしょう。
それに対して、大学附属ではない私立の中高一貫校の場合には、大学受験に向けた受験勉強が必要です。
大学受験に向けて高校の手厚いサポートがある場合もありますが、予備校などに通う場合には、別途予備校代や模擬試験代などが必要になるでしょう。
お金をかけて私立中学受験をしても、希望する大学の附属中学校に入れたら苦労した甲斐がありますが、子どもによっては中学に進学した後で、別の高校、大学への進学を希望する場合があります。
例えば、私立の中高一貫校に入ったものの校風が合わない、友人関係がうまくいかない、ほかに行きたい学校が見つかったなどの理由で、本人が別の高校への進学を希望する場合、高校の内部進学枠を放棄して、他の高校を一般受験することになります。公立中学からの高校受験であれば、クラスのほとんどが受験生という環境で受験勉強をすることになりますが、中高一貫校の場合は受験の相談をできる友達がクラスにいないなかで孤独に受験勉強をすることに。精神的な強さが求められるでしょう。
私立中学の中でも特に中高一貫校を志望する場合には、第一希望の学校だけでなく、第2希望以下の学校についても学校見学をしておくなど、事前によくリサーチをしておき、入学してからの後悔を未然に防ぐことも大切です。
冒頭で、私立中学校への進学率は住む地域によっても大きく異なるというお話をしました。私立中学校に進学した場合には、中学校・高校・大学の合計10年間は私立に通うと考えてマネープランを立てましょう。
また、教育費について考える際には、住居費や老後資金など他の資金とのバランスも意識することが大切です。教育費を軸にしつつ、家族であれこれと今後のマネープランについて話し合ってみてはいかがでしょうか。将来の見通しが立っていれば、家族のイライラや不安も緩和されることでしょう。
〈2022年9月30日 更新〉