深尾 奈々子
株式会社リクルート iction!事務局
「十人十色の働き方を、みんなでつくるプロジェクト」iction!事務局にて、ママのセミナーや、育児と仕事の両立を応援するコンテンツ・ツールの企画運営を担当。高校生の女の子を育てながら、会社員だけでなくアクセサリー作家として活動中。
毎日、家事と育児で手いっぱい!働きたい気持ちはあるけれど、家族との時間が減ってしまいそうで心配...。久々の社会復帰ができるのか不安...。グノシーのママユーザーに、「育児と仕事」についてアンケートを行ったところ、「ブランクもあるし、自分に合う仕事の見つけ方がわからない...」そんな声が聞こえてきました。
そこでグノシー編集部が、皆さんの声を代表して「育児と仕事の両立」のエキスパートに直接、お悩み相談してきました!
深尾 奈々子
株式会社リクルート iction!事務局
「十人十色の働き方を、みんなでつくるプロジェクト」iction!事務局にて、ママのセミナーや、育児と仕事の両立を応援するコンテンツ・ツールの企画運営を担当。高校生の女の子を育てながら、会社員だけでなくアクセサリー作家として活動中。
天田有美さん
キャリアカウンセラー
4歳の女の子、1歳の男の子の二児の母。フリーランスのキャリアカウンセラー、チアダンスインストラクター、ライターと、活動は多岐にわたる。
編集部: 今回のアンケート結果を見ると、育児に専念している期間が長い人からは、「社会復帰ができるのか不安」「自分にできる仕事をどうやって見つければよいのかわからない」という質問も多数寄せられました。
深尾奈々子さん: リクルートが取り組むiction!プロジェクトでは「働きたい」という気持ちを持つママを応援するセミナーを定期的に開催しているのですが、仕事を始めよう、となると、皆さん一様におっしゃるのが「資格を取らなくちゃ」とか、「勉強しなくちゃ」ということです。確かに資格や免許などは、わかりやすくラベルのついた能力ではありますね。
でも、人にはそれぞれ得手不得手があります。そうした中で、日々の生活全般で培われた力をすべて含めたものが、その人のキャリアと呼べるものなんです。
つまり、ママとして育児や家事に専念してきた日々も、立派なキャリアなんですよ。
天田有美さん: アメリカの教育学者が提唱した「ライフキャリアレインボー」という考え方ですね。
私はキャリアカウンセラーとして様々な人たちを対象にセミナーを開催していますが、いつでも一番盛り上がるのが、ママたちを対象としたセミナーなんです。講義が始まる前からもう、皆さん、近くの席の人たちとおしゃべりして盛り上がっている(笑)。これは、相手の背景を察しながらうまく自己開示し、コミュニケーションを円滑にしようと努力できるママならではの特性です。これを私たちは「若(じゃく)のチカラ」と呼んでいます。多様な年齢に対応しながら、円滑にコミュニケーションをとれる、重要な能力です。
加えてママ業をしている人に備わっているのが、「熟(じゅく)のチカラ」と呼ばれるもの。これは、子どもの相手をしながら洗濯機を回しつつ料理をする、など複数の家事を同時進行するマルチタスク力、自分で手が回らないことを周りの誰かにお願いしたりできるマネジメント力、赤ちゃんの泣き方で要望を類推し、応えてあげるおもてなし力などを総括してそう呼んでいます。
育児に専念している間も、立派にスキルを身に着けていると言えることが、わかっていただけるのではないでしょうか。
深尾奈々子さん: その上で、自分に合った仕事を見つけるには、自分が何をやりたいのかを冷静に考える必要があります。
なかなかイメージできない場合は、興味のあること、好きだと思えることをベースに考えていくことをお勧めします。すぐに働き始めるのでなくても、好きなことであれば勉強を始めるのも取り掛かりやすいですからね。
天田有美さん: 自分の性格や得意不得意、過去の経験などを分析して、自分の強みは何なのかを考えてみましょう。 私は何の強みもない!なんて思っている人でも、前職の経験や、日常生活で身についた力をひとつずつ棚卸ししていくと、きっと強みが見つかります。
そこが見つかったら、いよいよ仕事の条件です。
まずは、自分の中での優先順位を決めましょう!働くうえで何を最優先にするのかをまず決めます。家族との時間を大切にしたいから時短勤務を最優先にするのか、確実に稼ぎを得て家計の足しにすることを求めるか、自分の好きなことを追求するのか。
すべての望みをかなえられる理想の仕事はありません。どれを最優先にし、ほかの条件はどこを重視するのか考えていくと、だんだん目指す仕事内容や働き方が明確になってくるはずです。
深尾奈々子さん: そうですね。じっくり考えることはとても大切です。でももし、考えすぎて煮詰まってしまうようなら、まずは何か初めてみることです。やらないうちからどうしようこうしようと悩んで前に進めないのであれば、気になったところから始めてみるという手もあります。
例えば週2回、時間的にできそうな仕事から始めてみる。いざ働き始めると、もっとこうしたい、次はこう工夫しようとか、いろいろ欲が出てくるもの。そこから次の行動につなげていくのもありですよね。そうして仕事を広げていくうちに、アシスタント的な業務からフルで任されるようになったり、あるいは取引先から声をかけられたりといった、いわゆるヘッドハンティングされていった人もいます。
最初から、バリバリ頑張るぞ!とか完璧を目指そう!なんて張り切ると疲れてしまいます。今は働き方の選択肢も広がっているので、可能性を見据えて、まずは気負わずに始めてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、私たちが主催しているセミナーでは、リクルートが社会貢献活動の一つとして開発した「WORK FIT」というプログラムを提供しています。リクルートが長きにわたって培ってきたさまざまな知見が詰まっているのですが、その中でご紹介しているのが、ご自身の経験を振り返って強みを選んでいただくワークシート。ぜひ、強みを見つけるヒントにしてくださいね。
出典:リクルート「ママのためのお仕事探し応援セミナー」ワークシート
編集部: 編集部: なるほど...社会復帰は「恐れるには足らない」ということですね。ママたちが思っているほど、育児とキャリアというものには隔たりはないようです。それでもやはり、子どもが小さいうちは急な体調不良やら預け先やら、気がかりなことも多いですよね...。アンケートでも、多くの不安の声が寄せられました。
天田有美さん: ママあるあるですね!子どもの急な体調不良は予測できるものではないですが、私は上手に人を頼ることで乗り切っています。パパと連携して対応したり、実家の母に頼ったり...。普段からまめにコミュニケーションをとって、ママ友同士で協力しあったりもしています。予測はできないけれど、子どもの体調は日ごろからよく観察して、周囲への早めの連絡なども心掛けています。「いま熱はないんですけどちょっと息子が鼻水をたらしているので、明日の朝またご連絡します」といった具合ですね。
深尾奈々子さん: 私も最初は近くの保育園に空きがなくて、電車で連れていったりと、いろいろと大変でしたね...。子供が体調を崩したときには、自治体の提供するファミリーサポート制度を利用している友達も多かったです。急に具合が悪くなった時に初めて使うのではなく、普段元気な時に、息抜きもかねて預けられるところを確保しておくのはおすすめです。仕事に関しては、前倒しできるものはできる限り早めに片づけたり、急に休むことになった場合でもほかの誰にも私の仕事がわかるように「見える化」しておいたりといった方法で乗り切りました。
娘が高校生になった今では、急病などの心配はあまりなくなりましたが、今後も、子どもや家族の都合に合わせたり、あるいは私自身の興味の向き方次第で、働き方を柔軟に変えていく可能性もあると思っています。
天田有美さん: 子どもたちが大きくなる頃って、今からでは想像もつかないような社会になっている可能性もありますよね。
どんな世の中になっても、子どもの相談にのったり、「ママかっこいい!」って言ってもらえるような、広い視野を持つ人間でありたいと思っています。
編集部: ありがとうございました!
バリバリご活躍中のお二人も、私たちと同じ、育児と仕事の両立を目指して奮闘するママであることがよくわかりました。
「今後も柔軟に働き方を変えていく可能性もある」との深尾さんの言葉が示す通り、働き方に決まりや正解はないんですね。私たち一人ひとりに合った仕事や働き方を見つけるために、まずは一歩、踏み出してみることが大切だと感じました。