株式会社ウゴカス 佐々木 圭一氏
コピーライター、作詞家、大学非常勤講師。日本人で初めて米国の広告賞「One Show Design」で金賞を獲得するなど国内外で合計55のアワードを獲得。著書『伝え方が9割』は、シリーズ100万部を突破するベストセラー。
2019年03月28日
何気ない夫婦の会話なのに、ふとしたきっかけで"すれちがい"が発生すること、ありませんか?そこで、「夫婦すれちがい会話相談室」では、実際の会話と相談内容を元に、専門家が会話のポイントをアドバイス! 今回のアドバイザーは、『伝え方が9割』著者株式会社ウゴカス 佐々木 圭一氏です。
夕飯何がいい?
何でもいい
唐揚げは?
う〜ん...、唐揚げかぁ...
...
夫に食事の希望を聞いたら「何でもいい」と言うので、「唐揚げは?」など具体的なメニューを伝えると、「う〜ん...」と乗り気でない反応をされることがよくあります。どのように聞けば会話がスムーズに進むのでしょうか?(女性会社員)
伝え方の基本は、自分が言いたいことをそのまま言うのではなく、いかに相手の視点で話ができるかです。 今回のご相談には、2つのステップがあります。
ご相談内容では、旦那さんに1つのメニューしか提案していません。唐揚げだけ提案されても、さっぱりしたものが食べたかったとしたら、「う〜ん...」となってしまいます。
そこで、伝え方の技術「選択の自由」を使い、2つのメニュー(唐揚げと煮物)を提案してみましょう。
人は、「決断」が得意ではありません。しかし、2つの選択肢がある時の「比較」は得意です。「どちらかと言うと煮物」と答えやすくなるのです。
「選択の自由」は、メニューを聞くだけでなく、旦那さんに家事を手伝って欲しい時にも使える技術です。例えば「ゴミを出して」と伝えても「仕事で疲れてて...」と言われ、なかなか動いてくれない。そんな悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。この場合も、「ゴミ捨てかお風呂掃除どっちがいい?」と2つの選択肢を伝えることによって、どちらかを選んでもらえる可能性が高まります。
また、この技術は、2つの案から相手が選択できるので、"押しつけられた感"が少ないこともメリットです。1つの案だけだと「相手の言うことを聞いた」という印象になりますが、自らが決めているので、やらされている感じを与えずに要望を伝えることができるのです。
「選択の自由」を用いるだけでも会話がスムーズになりますが、旦那さんの好物や、以前から「食べたい」と話していたメニューなど、選択肢は「相手の好きなこと(求めていること)」にするとさらに良いでしょう。印象が良く、しかも相手に「イエス」と言ってもらいやすくなります。
なお、旦那さんの好きなことを元に選択肢を考える時に、例えば「簡単に作れるものがいい」「さっぱりしたメニューがいい」など、奥さん側の要望もあるかもしれません。「自分の希望」と「相手が好きなこと」がちょうど合うような選択肢を2つ、探すようにしましょう。
奥さんから「食事は何がいい?」と希望を聞かれた場合は、自分が求めているものを素直に答えればいいと思います。ただしこの場合も、相手にも希望があるかもしれないので、「夕飯は、塩焼か煮物がいいな」など、複数の希望を伝えるとより親切です。もちろん、旦那さんが食事を作る場合も同様です。
――なお、「相手に選択の自由を与える」という技術は、ビジネスシーンでも非常に重宝します。例えば営業でも、Aという商品だけでなく、Bという商品も持っていき、「AとBどちらがいいですか?」と話をした方が売り上げに繋がります。
なぜなら、Aという商品だけを提案すると、相手は「買わされている」という印象になるからです。多くの人は決断することが苦手です。「買うか買わないか」という判断を求められると、興味を持っていたとしても「イエス」とは言いにくい。でも、「AとBどちらがいいですか?」と言われれば、「どちらかといえばAの方が良い」と答えやすく、前向きに買ってもらえる可能性が高まります。判断は苦手だけれど、選択は得意な人が多いのです。
プロフィール
株式会社ウゴカス 佐々木 圭一氏
コピーライター、作詞家、大学非常勤講師。日本人で初めて米国の広告賞「One Show Design」で金賞を獲得するなど国内外で合計55のアワードを獲得。著書『伝え方が9割』は、シリーズ100万部を突破するベストセラー。
【夫婦すれちがい会話相談室】
アドバイザー:『伝え方が9割』の著者 佐々木圭一氏
アドバイザー:映画『うまれる』『ずっと、いっしょ』の監督 豪田トモ氏
アドバイザー:NPO法人子育て学協会会長 山本直美氏
アドバイザー:NPO法人ファザーリング・ジャパンの元祖イクボス 安藤哲也氏