両立支援 夫婦すれちがい会話相談室

映画『うまれる』監督の豪田トモ氏が解説!「育児疲れの妻に"早く寝たら"と言ったら詰められ、どう対処すれば良い?」 - #03

何気ない夫婦の会話なのに、ふとしたきっかけで"すれちがい"が発生すること、ありませんか? そこで、「夫婦すれちがい会話相談室」では、実際の会話と相談内容を元に、専門家が会話のポイントをアドバイス!

今回のアドバイザーは、90万人を動員した映画『うまれる』『ずっと、いっしょ』の監督であり、初の小説『オネエ産婦人科〜あなたがあなたらしく生きること〜』を出版した豪田トモ氏。

プロデューサーの奥さまと二人三脚で、命と家族をテーマとした作品を作り続け、自ら計1年間の育休も実践されたワーキングファザー。これまで多くの家族を取材し、特に産後うつ経験のある女性50人の取材から見えてきたという、育休中妻への夫の対応をアドバイスいただきます。

  • 「ふーーーっ、今日も︎⚪︎⚪︎ちゃんがぐずってばかりで、大変だったー」(深いため息)

  • 「疲れてるんなら、早く寝たら?」

  • 「あなたと違って、私は1日中、大人と話してないのよ!」

  • 「えっ?」

  • 「早く寝たらって、あなたが早く寝たいから言ってるんでしょ」

  • 「そんなこと、ないよ」

  • 「そんなこと、あるわよ。私と睡眠と、どっちが大事なのよ!?」

【相談内容】

育休中の妻が育児に疲れています。「疲れてるなら、早く寝れば?」と言うと、「あなたと違って、私は1日中、大人と話してないのよ!あなたが早く寝たいんでしょ。私と睡眠と、どっちが大事なのよ」と詰められました。

こちらも仕事で疲れて帰って来て、妻を気遣って言っているのに、このように詰められると話す気力もなくなります。どう対処すれば良いのでしょう。(男性会社員)

【夫側】「どっちが大事なの」と詰められたら?

映画『うまれる』監督 豪田トモ氏

お疲れサマンサ! 懐かし言葉・死語マニアの豪田トモです!夫婦関係にアドバイスをするような専門家ではないのですが、今回、僭越ながら少しダベさせていただきますね!

まず、勇気を持って相談をしてくれた旦那さん、あなたチョベリグ!奥さんを気遣ったのに詰め寄られちゃったら、ガビーン!そんなバナナ!ですよね。相談内容から「なんとかしたい」と思う気持ちが僕には、しこたま伝わってきます。応援しますよ!

さて「私と睡眠と、どっちが大事なの?」の問いに「もちろん君だよ」と答えてもね、おそらくこの時点では70点。100点にするには、この言葉をそのまま飲みこんじゃダメです。これは、奥さんの「私をちゃんと見て!」というアラートだと思うんすよ。

「どっちが大事」論争を仕掛けてきた奥さんがここに至るまで、奥さんなりの心の遷移があったはず。実は、かなりの我慢を積み重ねている可能性があります。

でもね、アラートを発してくれているうちが花。奥さんもなんとかしたいと思っているはず。こういう夫婦のすれ違いというのは、ちゃ〜んと向き合っていかないと、そのうち、お互いどーでも良くなってきて、最終的にチョベリバな展開になりますからね。

実際、「産後2年以内に離婚する夫婦が多い」という厚生労働省調査の恐ろし〜い統計結果もあります。今のうち一緒に解決していきましょう。うん。ギリチョンセーフ!ってことで、2ステップでお答えしますね。

<ステップ1>妻の言葉をそのまま"オウム返し"する練習を!

大前提として理解してもらいたいのは、男性は「結果重視」、女性は「経過重視」といった男女の特性の違い。
これは一般的にもよく言われますが、僕が様々な背景の方たちを取材・撮影させてもらってきた中での個人的見解でも、確かにそういう傾向があるなと思います(すべての男女に当てはまるわけではない)。

コミュニケーション・会話の目的に、そもそものすれ違いがあるわけです。まずね、このことは耳をダンボにして頭に入れてください。

僕は小説『オネエ産婦人科』執筆のために、子育て中のママor産後うつを経験したママ50人以上に話を聞き、専門家にもたくさん取材をしました。

今回のようなすれ違いは、ほぼ100%の家庭で起きているように思います。あなただけじゃないですよ。
結果、僕なりにわかったことは、産後は女性特有の心理メカニズムがあり、パパとママのすれ違いが最も顕著になる時期だということ。

そして、新しい命を生み出すという、とてつもなく偉大なことをやってくれた産後女性には、しっかり寄り添ってあげる必要がある!ということ。

あなたの奥さんが、産後うつにまで陥っているかはここで判断できませんが、少なくとも育児にグロッキーな感じですよね。

これは男性には伝わりにくい部分ですが、赤ちゃんのお世話はめちゃんこ大変。特に夜泣きが多い時期、何度も起きて授乳やおむつ替えをしなきゃいけない。

産後女性が強く訴える辛さの一つに寝不足があります。例えば、徹夜に近い状態が3日続いたら、元気ハツラツではいられないですよね?お子さんによっては、激しく手がかかる場合もあります。我が子のこととは言え、心身ともに疲れます。

それまで毎日出勤していた生活から180度変わり、コミュニケーションを図りにくい小さな命と片時も離れず向き合っている。一人で乳幼児の世話をするというのは、もしかしたらすごく寂しく、孤独を感じることもあるのかもしれません。

おそらく奥さんは、その大変さ、心身の疲れ、孤独感という事実を、まずは受け止めて欲しい。ただただ、話を聞いて欲しいのかなと思います。

結果重視の男性脳が、相手を気遣って解決策を言ってしまったこと、とても良く分かります。僕も結果主義で考えてしまって、妻がトサカに来るってこと度々(!)。奥さんは解決策やアドバイスが欲しいわけではなく、気持ちに寄り添って欲しかったのかな~って、今なら思う。

映画『うまれる』監督 豪田トモ氏

この解決法はそんなに難しくないです。ズバリ、「オウム」になること。

奥さんの気持ちを受け止めてあげるべく「疲れた」と言ったら「疲れたんだね」、「大変だったのよ」と言ったら「大変だったね」、「1日中、大人と話してない」と言ったら「そうか、1日中、大人と話してないんだね」と、奥さんの言葉をオウム返しで言ってみる。

言葉をそのまま繰り返すのだから、難しくないですよね。オウム返しは、カウンセリングなどでも相手を安心させる効果があるそうで、「自分の気持ちを受け止めてもらえた」と思ってもらえることが多いようですよ。

ただ、そっぽを向いてやっちゃダメですよ。ちゃ〜んと、奥さんの顔を見て、頷きながらです。はじめはうまく出来なくても、まず先に形から入る。

オウム返しをしていくうち、奥さんを気遣う気持ちが後からしっかり生まれて行動に魂が入ってくることもあると思います。

<ステップ2>妻が安心できる「労いの言葉」を!

オウム返しが軌道に乗ってきたら、合間に「いつも助かってるよ」「ありがとう」など、労いの言葉を織り交ぜてみましょう。

奥さんは、あなたが寄り添ってくれているのだと、さらに安心できるようになります。その安心感や信頼感は、夫婦関係にも、あなたのお子さんがすくすく育つ上でも、大きな力になってくれます。

こういう「テクニック」的な話は、もしかしたら女性には怒られるかもしれないけれど、男女は全く同じ心理状態になることは出来ないと思うのです。出来ないのであれば、「テクニック」だったとしても、やった方が結果的には良い方向に行くのかな、と思います。

とはいえ、乳幼児の世話の大変さは、体験してみないと分かりません。
ってことで、レッツ・トライ!仕事の忙しさなどあるかもしれませんが、1日、育児を交代してみることをおすすめします。

寝かせようとしても泣き続ける、休憩が取れない、外に出られず大人と話せないといった育児の大変さをギャフンと体験すると、奥さんがオーマイゴッド!神のように見えます。

この「儀式」通過で、もっと自然に奥さんに寄り添い、労う言葉も出てくるようになると思いますよ。夫婦関係も良くなる可能性が高まるし、あなたの生活に「子ども」という側面がバッチシ入って、人生がさらに豊かになる。

耳の痛い部分もあるかもですが、夫婦は家庭の土台。二人の関係性によって、幸せ度も子どもの成長も変わってくる可能性がある!と考えると、ラブラブな夫婦時間を過ごすことは、男性的に言うなら「重要な投資」。

必ず「リターン」は返ってきます。人生、山あり谷ありクロードチアリ。そのリターンは、人生にとってかけがえのないものになるはずですよ。

また、手前味噌ですが、僕の小説『オネエ産婦人科』の中では、おっぱいをあげながら泣いている妻に対して「子どもが生まれて幸せで泣いている」と勘違いをしている夫の様子、「毎日大変」と妻が話すと、「何が大変なの? 一緒にお昼寝してるんでしょ?」「毎日、日曜日みたいでいいなぁ」なんて言っちゃう、すれ違いの様子がしこたま描かれています(この発言が「すれ違い」と思えなかったら、もしかしたらあなたは「重症」かも!)。

夫婦のすれ違いを如実にご理解いただけると思いますので、もし良かったら参考にしてみてください(って宣伝ね!)。

【妻側】育児の孤独感を理解してもらえないときは?

してほしいことを細分化して具体的に伝えましょう

映画『うまれる』監督 豪田トモ氏

一つの命を産み育てるというのは、本当に本当に大変なことです。特に小さな頃は片時も目が離せませんよね。そんな中で旦那さんに気持ちが伝わらないのは、とってもトホホで悲しいことですね。

まず大事なのは、先にも言いましたが、男性は「結果主義」タイプが多いと頭に入れてみることかもしれません。
男ってのはね、どのようにしてほしいか、細かく説明して伝えないとわからない、困ったちゃんな生き物。「子どもをみててね」と頼んだら本当に「眺めて」いるだけ、な〜んて話はよくありますね。
そこで、話す前に次のようにはっきり伝えてみるのも一つの手です。

「ちょっと話を聞いてほしいんだけど。でもね、何も言わず、うなずきながら、じっと仏の顔をして、私の話を聞いてね。アドバイスはいらないから!」というふうにね。

具体的説明抜きで旦那さんに理解を求めても、今の段階ではまだ難しいかも。子どもだと思って(笑)、気長に旦那さんのことも育てる気持ちで続けましょう。

「赤ちゃんだけでも大変なのに!?」と思われるかもしれませんね。そうなのそうなの。そうなんだけど!長い目で見れば、これってマンモス大切なこと。

でもやっぱり赤ちゃんと夫を一緒に育てるのは大変。そこで大切なのは、あなたを「サポートしてくれる存在」を見つけることだと思う。一番のオススメは「ママ友」です。同じ立場だからこそ、バッチシ共感してくれる、ということはありますよね。

取材した産後うつになった方々の原因は様々でしたが、産後うつにならず、子育てを楽しんでいる人に共通している点は、ママ友がいる、ということでした。

笑顔のママの横には、だいたい心強いママ友がいます。ジモティーなママ友づくりに不安があるかもしれませんが、あなたにとって「財産」になります。

僕の考えでは「ママ友探しは宝探し」。もちろん、気が合わない人もいるとは思いますが、必ず、助けになってくれる人はいますよ。ちょっぴり勇気を出して、あなたの人生にとっての宝を探しにいってみてはいかがでしょう?

僕のダベリがお二人の少しでもお役に立てていれば、マンモスうれピーです!アドバイスだけですみません!応援していますよー!ではまた次回!

プロフィール

豪田トモ氏

豪田トモ氏

映画監督・作家。命と家族をテーマとしたドキュメンタリー映画『うまれる』『ずっと、いっしょ』(文部科学省選定・厚生労働省社会保障審議会特別推薦)は累計90万人を動員。2019年に初の小説『オネエ産婦人科』を刊行。子育ての明暗を面白おかしく描いた新作映画『ママをやめてもいいですか〜?(仮)』を近々公開予定。

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