安藤哲也
出版社、IT企業など9回の転職を経て、2006年にNPO法人ファザーリング・ジャパンを設立。「笑っている父親を増やしたい」と、講演や企業向けセミナー、絵本の読み聞かせなどで全国を歩く。最近は管理職養成事業の「イクボス」で企業・自治体の研修も多い。厚生労働省「イクメンプロジェクト推進チーム」顧問、にっぽん子育て応援団共同代表等も務める。著書に『パパの極意〜仕事も育児も楽しむ生き方』(NHK出版)、『できるリーダーはなぜメールが短いのか』(青春出版)など多数。3児の父親。
iction!の取り組み 、 共働き 、 家事・育児 、 お悩み相談
2019年08月22日
何気ない夫婦の会話なのに、ふとしたきっかけで"すれちがい"が発生すること、ありませんか? そこで、「夫婦すれちがい会話相談室」では、実際の会話と相談内容を元に、専門家が会話のポイントをアドバイス! 今回のアドバイザーは、NPO法人ファザーリング・ジャパンを立ち上げ、イクメンプロジェクト推進チーム顧問(厚生労働省)、男女共同参画推進連絡会議委員(内閣府)などを歴任、3児の父親でもある安藤パパこと安藤哲也氏。全国のパパたちからの熱い期待に応え、年間250回以上もの講演に飛び回る安藤パパから、夫婦と家族を笑顔にするための真髄を伺います。
来週末は会社の親睦会に出ないとならないから、行ってくるよ。
はいはい、男の人はいいわよね、週末だろうと外に逃げられるから。せいぜい楽しんできてください。
次回は俺が子どもの面倒をみるから、たまには飲み会に行ってくれば?
あなたみたいに呑気に行けるわけないじゃない。だいたい不公平すぎなのよ。
おいおい、また始まるのかよ。
いつも我慢しなきゃならないのは私。もっと申し訳ないと思ってよ。
だから、好きなようにしていいって言ってるじゃん。
あ〜あ、あなたみたいに好きなように働けたら、どんなに幸せかしら。
【相談内容】
妻はバリキャリで、仕事も家事も育児もすべてを平等にしたいタイプ。家では事あるごとに「不公平だ」と私に怒りの矛先が向かい、ずっとチクチクとイヤミを言われています。僕が言い返すと喧嘩になってしまうので、喧嘩にならずにイヤミを回避できる言い方ってないでしょうか。(会社員夫)
パートナーさんは、自分のライフスタイルに明確なイメージがあって、そこにたどり着けないことにイライラしているようですね。おそらく、あなたに対してだけではなく、仕事のこと、お子さんのこと、他のことでもいろいろと不満が溜まって、すべてを家であなたにぶつけているのかもしれません。
僕はいつもパパたちに「パパがママを笑顔にすることは"間接育児"になるんだよ」と言っています。ママがイライラして不機嫌だと、お子さんも不安定になってしまいますからね。子どもが健やかに成長していくためにも、なんとかママを笑顔にしてあげましょう。では2ステップでいきますね。
喧嘩しているうちはまだいいんです。ママが「私を見て、関心を持って」と思っている証拠ですから。お互いの関心がなくなったら何も言わなくなりますよ。美容院に行ったらしい日に、ちゃんと「髪型、変えたんだね。似合ってるよ」と言ってあげてますか? そういう小さな一言がとても大切です。
今回のあなたの言い方も、「飲み会に行かなければならないから」というエクスキューズが入ってしまっているので、その点もカチンときてしまうのでしょうね。まずは逃げ腰にならず、あなたがママの話を全部受け止めると覚悟を決め、一度不満をすべて吐き出させてあげませんか。
僕の妻もフルタイム勤務で頑張っているので、疲れが溜まってそろそろヤバイかなと思う頃、愚痴を吐き出させてあげるようにしています。僕が夕食の下準備をして、冷蔵庫でビールグラスを冷やして、彼女が帰って機嫌悪そうだと「会社で何かあったの?」と訊きながら、冷えたグラスにビールを注いであげる。すると、「そうなの!今日、こんなことがあったの」と、ビールを飲みながら20分くらい、ぶわーっと職場での不満が噴き出してきます。
これが仕事の会話であれば課題解決しようとなるけれど、そこはアドバイスをしたり結果を導き出そうとはせず、ただひたすら聴いてあげる「傾聴」でいいんです。夫婦の会話の基本は「受容・共感・賞賛」です。話をそのままを受け入れ、ありのままのを認め、褒めてあげる。だから、「うんうん」「そうなんだ」と頷きながら、「きみは頑張ってるよねー」としっかり共感してあげる。それだけで、うちの妻は割とスッキリしますよ。
グラスを冷やす行為みたいに、「あなたのことを考えていたよ」ということを、ひとつ家事や態度で示すことが大事ですね。平日にできなかったら休日にやればいいし、お互いの職場が近かったら、平日のランチに誘い出してみてはいかがでしょう?友人のパパ友は夫婦でランチデートをしてお互いのキャリアビジョンを話し合うそうです。会話が家の中だけだと、どうしても目の前の家事や子どものことに話題は集中してしまいがちなので、環境を変えて向き合ってみると新鮮でいいのかもしれません。
僕の家は、今、上の2人は大学生であまり家にいませんが、3番目の小6の息子はいつもいるんです。その息子が学校の移動教室なんかで家にいない日は、二人きりになれる大事な夜ですからね。そんな時は必ず妻と外でデートして、ゆっくり食事をしながら話をしますよ。
次に、お互いのスケジュールをもっと細かく共有してみませんか。来週末の飲み会の予定を、ママはもっと早く知りたかったかもしれません。スケジュール共有だけなら簡単にできますよね。僕はGoogleカレンダーがなかった時代から、家に生協カレンダーという家族全員の半年先までのスケジュールがわかるカレンダーを貼って、そこに予定を書き込んでいました。僕が家に居られる日がわかっていれば、妻はその日、保育園のお迎えをしないで会社の飲み会に行けるとか、家族全員のスケジュールが早くからわかっていれば、先々の予定をストレスなく決めていくことができますよね。
もちろん、そんなふうに気遣っていっても、喧嘩になってしまう日はあります。そんな時は「お互い疲れてるんだから、続きは明日にしよう」と言って、ひと晩寝てクールダウンさせるんです。世の中に大変じゃない仕事も育児もありません。みーんな大変なんです。喧嘩が激しくなってしまう時って、疲れているか、眠いか、お腹が空いているか、のいずれかです。そんな生理的イライラがバトルを激しくさせてしまうので、不毛な言い争いは中断させ、とりあえずご飯食べたり、寝ちゃうんです。まあ、大抵はパパのほうが「喧嘩を回避できてラッキー」って忘れて、ママのほうはしっかり覚えてるものですけどね(笑)。
僕たちパパって、実は家族がいてくれるから、その中で自由に生きているんですよ。僕は妻のことを、僕の可愛い子を3人も産んでくれた女神だと思っていますよ。「かみさんは神様」。その気持ちを持っていれば、何を言われても我慢できます(笑)。辛口なママの方がパパは成長できますよ、きっと。それを逆に楽しみながらお互いに頑張りましょう!
責任あるポジションでのお仕事、毎日の育児に家事にと、並々ならぬ努力が必要だと思います。パートナーさんと話し合って、子育てや家事をアウトソーシングするなどのリフレッシュ策も検討してみてはいかがでしょう。僕の妻は、外部の人が家に入ってきて家事をすることに抵抗があって、家事代行のようなサービスを嫌がるタイプでした。だからまず僕がやりますが、それでも足りなければ外部サービスを活用することで妻が少しでも楽になって欲しい。そのほうがみんな嬉しいし、家族の笑顔が増えると思っています。
「家族の幸せはママが笑顔でいること」。これに尽きます。ママが笑顔でいてくれれば、お子さんもパパも安心して生活ができるんです。お子さんはまだ小さいようですが、お子さんの前でイライラしてパパに嫌味を言い続けるようでは、よくありません。お子さんの心が不安定になり、自分のせいでパパとママが仲悪くなっているのだと自分を責めるようになったり、夫婦の会話をそのまま真似して言うようになってしまいます。あなたが少しでも楽になれるよう、笑顔で過ごすことができるよう、パパとの時間をつくり、家族がハッピーになるパートナーシップについて話し合ってみてはいかがでしょう。
プロフィール
安藤哲也
出版社、IT企業など9回の転職を経て、2006年にNPO法人ファザーリング・ジャパンを設立。「笑っている父親を増やしたい」と、講演や企業向けセミナー、絵本の読み聞かせなどで全国を歩く。最近は管理職養成事業の「イクボス」で企業・自治体の研修も多い。厚生労働省「イクメンプロジェクト推進チーム」顧問、にっぽん子育て応援団共同代表等も務める。著書に『パパの極意〜仕事も育児も楽しむ生き方』(NHK出版)、『できるリーダーはなぜメールが短いのか』(青春出版)など多数。3児の父親。
【夫婦すれちがい会話相談室】
アドバイザー:『伝え方が9割』の著者 佐々木圭一氏
アドバイザー:映画『うまれる』『ずっと、いっしょ』の監督 豪田トモ氏
アドバイザー:NPO法人子育て学協会会長 山本直美氏
アドバイザー:NPO法人ファザーリング・ジャパンの元祖イクボス 安藤哲也氏