ファイナンシャルプランナー
氏家祥美さん
女性のためのお金と仕事の相談室「ハートマネー」代表。女性活躍応援FPとして、働き方や夫婦・親子関係も含めたマネーアドバイスが好評。お金・仕事・時間のバランスのとれた幸福度の高い家計を追求。自身も2児の母。
老後のお金は心配だけど、まだ先のことだからと後回しにしていませんか。でも実は、早め早めに準備していくことが、老後の家計にはとっても大事なんです。どう準備すればよいのか、コツはあるのか、そんな気になる疑問について、お金のプロであるファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんに聞いてきました!
金融庁の試算では、夫婦に必要な老後資金は2000万円とされていましたが(※1)、そこに病気や介護への備えや、葬儀費用などを一人250万円ずつ加えると、夫婦に必要な老後資金は2500万円程度と考えられます。ただし、これはあくまでも全国平均をベースにしたもの。たとえば、都市部に住む人や賃貸住まいの人、旅行などのレジャーや趣味を楽しみたい人などは、より多くの資金が必要になるでしょう。
もちろん年金や退職金があるから心配しなくても大丈夫という人もいますが、シミュレーションすると意外と足りないことが多いのも事実です。60歳で仕事を辞める予定の人は、退職金をもらったとしても65歳で年金をもらうまでにかなり使ってしまうでしょうし、体調を崩せば病院や介護施設に高額なお金を支払うことになります。
また、今後も公的年金制度自体は続くとしても、金額や受取開始時期など、何かしらの見直しはあると思ったほうがよいでしょう。老齢年金は生涯ずっともらえる終身年金ですが、日本は世界でも有数の長寿大国であり、急激な少子高齢化が進んでいます。もらう人ばかりが増えて納める人が減っていく状況で、制度を今のまま維持するのは困難です。
その対策の一環として消費税も10%になりましたが、ヨーロッパなどでは年金受給開始年齢を67歳や68歳に上げることを決めた国がいくつもあります。現状の制度が変わる可能性も、ある程度想定しておきましょう。
例えば、お子さんがいらっしゃる家庭は、一番下のお子さんが大学を卒業する年にご夫婦は何歳になるのかを計算してみましょう。そこから老後資金を貯めるのは大変だと思いませんか?
ひと昔前なら、子どもが自立したとき親はまだ50歳そこそこで、10年くらい働いて老後に備えることができました。ところが出産年齢があがっている現代では、子どもの教育費のピークと同時に自分も退職年齢を迎え、さらに親の介護まで始まるケースもあるんですよ。
独身の方や子どものいないご夫婦は、40代になれば老後のお金について真剣に考え始める人が多いと思います。一方で子育てファミリーは、目の前のことだけで精一杯で、老後のことまで頭が回らないケースが多いですね。子育て中でも「住宅資金」「教育資金」「老後資金」の3つは、同じスタートラインで並行して貯め始めないと間に合いません。
3つの要素はつながりを持って総合的に考えることをおすすめします。「教育にお金をかけたいから、マイホームの予算を減らそう」「老後は田舎に移住したいので、現役時代は賃貸住宅に住もう」など、何にいくらかけるかのバランスを考えましょう。 先のことだからと後回しにすることなく、早いうちから考えることが大切です!
お金を増やす方法は、3つしかないと言われています。1つめは働くこと、2つめは無駄を見直して節約すること、3つめは運用することです。このなかで、働いて収入を増やすことが一番確実だと思います。たとえば月6万円を節約するのは大変だし苦痛ですが、今働いていない人が月6万円稼ぐことは、現実的に可能ではないでしょうか?そこから月3万円貯めたとしても、1年間で36万円貯められます。まさに「塵もつまれば山となる」のです。私が働くことをためらう相談者の方に必ずお伝えするのは、「今が一番若い!」ということ。働き始めるのが早ければ早いほど、多く貯められますよ。
夫婦共働き家庭の場合は、大きな固定費に要注意です。収入があっても、住居費や教育費、家事や保育サービス、自己投資などにお金を投入しすぎると、働いても働いても貯まらない状態になりやすくなります。新たな支出が増えるときには、やめられるものがないか検討し、支出が膨張しないように気をつけたいですね。家計にメリハリをつけ、今も未来も充実した生活を送れるようにお金を使いたいものです。
毎月一定額のかけ金を拠出し、運用方法を自分で選ぶ「確定拠出型年金」、現役時代に保険料を払い込むと引退後に年金が受け取れる「個人年金保険」など、いろいろな方法があります。私は投資も一つの方法だと思います。老後資金は20~30年という長期にわたって運用できるのが大きな強みです。短期的に多少損が出ても、時間の経過によってリカバリーでき、最終的には大きなリターンを得られる可能性があります。投資するなら余剰資金が必要で、資金は多ければ多いほどリターンも多くなります。資金を準備するためにもやはり「働く」のが近道です。
漠然とした将来への不安を感じている方は多いと思います。一人であれこれ考えて不安になるようであれば、まずは将来の家計をシミュレーションしてみましょう。そして、その結果をパートナーや家族を交えて話し合うことをおすすめします。
夫婦や家族と今後のマネープランを話し合うときは、「住宅資金」「教育資金」「老後資金」に加え、「働き方」も必ずセットで考えるのがおすすめです。たとえば「妻も月〇円稼げば、住宅ローンを△歳で完済できる」など、具体的な金額がわかれば、行動に移しやすいですよね。話し合いのプロセスで、考え方の違いをたくさん発見すると思います。でも、必ず解決策や着地点は見つかります。とことん話し合い、足並みをそろえていきましょう。
久しぶりの復職には勇気がいるものです。ただ、できない言い訳を重ねるより、できることを一つでも探して、まずは短時間からでも働き始めてほしいです。日本人女性の平均寿命は87歳(※2)。長い人生、母として生きる以外にも、何か生きがいのようなものを仕事で見つけられたら、お金だけでなく、責任感、世の中の変化へのアンテナ、魅力的な人との出会いなど、たくさんのものが手に入ると思いますよ。
ひと昔前に比べると、働き方の選択肢が多様化しています。正社員を続けるか、家事子育てに専念するか、という二者択一ではなく、ペースダウンして短時間だけ働く、在宅で働く、起業する、もう一度正社員になる等、その時々の状況に合わせた働き方を選びやすくなってきました。世の中全体としては、性別や年齢に関わらず、働ける人は働ける範囲で働いてみんなで社会を支えましょう、という方向に変わってきています。また、それをサポートする制度やサービスも整ってきています。今すぐには働けない、働きたくないという人も、そんな時代の変化を頭に入れて、やりたいこと、できることをイメージしておくといいのではないでしょうか。
※1 金融審議会市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月)より
※2 厚生労働省「平成30年簡易生命表」(令和元年7月)より
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氏家祥美さん
女性のためのお金と仕事の相談室「ハートマネー」代表。女性活躍応援FPとして、働き方や夫婦・親子関係も含めたマネーアドバイスが好評。お金・仕事・時間のバランスのとれた幸福度の高い家計を追求。自身も2児の母。
この記事でご紹介している「「iction!みらい家計シミュレーション」は、2022年9月末をもちまして終了させていただきました。
新たに、人生100年時代に役立つ「お金」と「働く」をテーマにした記事をリリースしております。ぜひご覧ください。
〈2022年9月30日 更新〉