沢広 あやさん(Aya Sawahiro)
京都府出身。2003年よりデンマーク・コペンハーゲン在住。王立図書館大学で司書資格を取得後、公共・学校図書館で児童サービスを担当。現在は児童書専門店に勤務しながら、翻訳者、ライターとしてデンマーク社会、ジェンダー、子どもの本に関する発信を続けている。訳書にセシリエ・ノアゴー著『デンマーク発 ジェンダー・ステレオタイプから自由になる子育て』(ヘウレーカ刊)ほか。
共働き 、 産休・育休 、 ワーク・ライフ・バランス 、 法律・制度
2023年07月27日
日本でも共働き世帯が70%を超え、働く女性が産前産後休業(産休)・育児休業(育休)を取得した後に職場復帰するのが一般的になった今、「子育ては夫婦で協力してやるもの」という認識が、特に若い世代では当たり前になりつつあると言われています。
また、政府の子育て支援策の一つとして「男性育休」が話題になっている今こそ、女性だけでなく男性も仕事と育児の両立について考えるいいタイミングだと思います。
そこで今回は「世界の人々の「両立」のアイデア」シリーズの番外編として、父親も積極的に子育てに関わる北欧から、各国の育休制度の特徴や男性の取得率が高い理由、夫婦で取得する育休期間の子育て事例を紹介します。
執筆いただいたのは、デンマーク在住の沢広 あやさん。現地で子育てしながら働く彼女が、実際に育休を取得したパパ・ママに取材し、リアルな「北欧の育休事情」について届けてくれました。
男性育休はもはや当たり前な北欧社会。デンマークでは約80%、スウェーデンでは90%超の男性が育休を取得している。そんな北欧で育休制度はどう位置づけられているのか。そして父親として子どもや家族とどのように関わっているのか。デンマークの男性2人に話を聞いた。
ワーク・ライフ・バランス先進国として紹介されることの多い北欧諸国。長時間労働は非生産的だと見なされ、男女共に効率的に仕事をし、プライベートな時間を大切にするバランスの取り方は、もはや文化として定着している。世界各国のジェンダー格差を比較した「ジェンダー・ギャップ指数」でも北欧は上位にランクイン。男性の育休取得率の高さや女性議員の多さでもよく知られている。
デンマークは23位。国の定めた育児休業期間が他の北欧諸国より短いことも順位が他の北欧諸国より低い理由の一つ。
スウェーデンでは、育休は出産休業と併せて「両親休業」と呼ばれ、子ども一人につき最長480日。そのうち90日ずつが父親、母親それぞれに割り振られ、相手に代わって取得することができない。このように育休の一定期間を男性に割り当てるパパ・クオータ制は、各国で採用され、その期間はアイスランドでは6カ月(180日程度)、ノルウェーでは15週(105日)となっており、男性の育休取得率も軒並み70%を超える。またフィンランドでも、2021年からは女性と同じ日数(164日)の育休がパートナー*1にも保障されている。一方デンマークでは、両親合わせた育休は52週(365日程度)。育休中は公務セクターであれば100%の給与保障、民間セクターでもおおむね同様にカバーされるが雇用契約によって異なり、支給のない場合は公的な育児保険を自ら申請する仕組みだ。男性が取得する育休平均日数は2019年には34日だったが、当時法律で定められた男性の育休期間は北欧諸国の中では最も短く産後の2週間(14日)のみだった。2022年8月からは、EUからの加盟国への指令により9週間(63日)のパパ・クオータ制が追加されている。
育休中の男性のために市が主催するアクティビティを紹介しているデンマークのサイトより。
国によって法律で保障されている期間は異なるものの、男性が育休を取得すること自体はもはや当たり前になっている北欧社会。しかし初めからそうだったわけではない。スウェーデンでは1974年に世界で初めて男性も取得できる育児休業制度を導入したが、長い間、男性の取得率は上がらなかった。そのため90年代にパパ・クオータ制を導入。その結果、男性の取得率は77%まで上昇したそうだ。パパ・クオータ制はその後も日数が増え、現在スウェーデンでは90日となっている。今では男性の育休取得率は9割を超えるスウェーデンだが、男性が取得する育休期間は、両親が取得できる育休期間全体の約30%。つまり女性が70%を取得している。今後さらに男性の取得期間を延ばすことが課題だ。
同じ傾向はデンマークでも見られ、男性の育休取得期間は両親に与えられた育休全体の11%程度。育休の約90%を女性が取得するのが一般的だ。2022年からは男性に割り当てられた9週間によって、男性の育休取得期間がさらに延びることが期待されている。 なぜ北欧では男性の育休取得にこだわるのか。実は北欧諸国では、20年以上前から、それまでの伝統的な「男性らしさ」にテコ入れし、いわゆる「マッチョな男性像」を解体するための一策として、男性が子育てにより深くコミットし責任を持つことが、ジェンダー平等の底上げには不可欠だと考えられてきた背景がある。そのためにも、男性が単に育休を取得するだけでなく、どのぐらい長く取得し、その間に育児や家庭にどれほど深く関わるかがより重要だと考えられているのだ。
デンマークの父親育児休業推進のためのパンフレットより。
「市主催のパパ友グループや訪問保健師のおかげで父親としての自信がついた」と語る男性のインタビュー記事。
コペンハーゲン市内に暮らし、3人の子どもの父親でもある、アナス・ダルセーヤさん(43)。コペンハーゲン郊外の博物館の学芸員で博士号を持つ研究者だ。前妻との娘(アストリッドさん・15)と、再婚後に生まれた娘(フリーダさん・6)、息子(アルフレッドさん・3)の育休を取得したアナスさんに話を聞いた。
3人のお子さんの育休を取得したアナス・ダルセーヤさんと娘のフリーダさん。
(撮影:アナス・ダルセーヤさん)
── 3人のお子さんの育休を取得されたとのことですが、簡単にその時の状況を教えてください。
1人目のときは、仕事を辞めて大学院の修士課程で学んでいたときでした(子どもが生まれると、デンマークでは学生であっても育休が取得でき、奨学金もその期間延長して受給できる)。パパ・クオータの2週間を取得しましたが、初めての子どもだったこともあり、生活が一変しましたね。2週間の育休後には妻が育休を続け、その後は、娘が4カ月頃から私一人で4カ月取得しました。
2人目のときは、博士課程で博士論文を書いている時期でした(デンマークの博士課程は大学と労働契約があり給与が支給される。育休も取得可能でその期間は給付金の対象となる)。ちょうど妻が転職したところだったので、彼女は比較的早い段階で仕事に復帰したくて。それで娘が4カ月半ぐらいで私が3カ月取得し、その後、妻がまた育休を取りました。
── 3人目のときはいかがでしたか?
今度は私が転職したタイミングでした。博物館でのフルタイムの仕事で、上司も育休取得を経験していましたし、私の育休も当然だと。それで息子が7カ月から1歳直前に保育園に入園するまでの4カ月間取得しました。
── 育休を取得して、感じたこと、変わったことはありますか?
幼い子どもの世話をするのは、フルタイムで働くのと同じぐらい忙しいんだとよく分かりましたね。あと、一人で一日中育児に向き合うのはつらいこともあると。それと特に2人目までは、子どもを寝かせたり、食事をさせるときなど、私なりに工夫するんですが、うまくいかない場合に、仕事から帰宅した妻が、「それはこうした方がいい」とか「そのやり方はだめ」と言ってくるのがつらくて。私なりに試行錯誤しながら、自分なりのやり方を見つけたかったし、自分もできるという自信を持ちたかった。そうしないと、いつまでも妻に頼らなきゃいけないじゃないですか。それを妻は少しずつ分かってくれたと感じています。
── 親として、自分も対等な立場で育児に関わりたかった?
大変なときや、思うようにいかないときは、普段から育児を二人でやっているからこそ、交代で休憩したりできました。また、二人で子どもの成長について話ができるのはうれしいですよね。
そして、少しずつ自分なりの意見も言えるようになりました。
父親はあまり子育てに口出ししないなんて時代もありましたが、私は子どもと過ごしてきた時間があったから、自らあれこれ提案できるようになった。妻と子育てについて対等に、同じ目線で話せていると感じています。
ただ、母親が家庭のことを管理しがちだということは妻とも話しますね。私の友人も電話で「妻に家族の予定を確認してから折り返す」なんて言うんです。それって家族の予定を自分が把握できていないってことですよね。私自身も妻から「私も忙しいから、家族のことにもっと深く関わってほしい」と常々言われます。育休を取得して、もともとあった男女の不平等を少しは軽減できたかとは思いますが、まだやっぱりある。だから育児や家庭のことを自分事にするのは大事ですよね。
アナスさん。娘のアストリッドさん(上)とフリーダさん(下)と。(撮影:アナス・ダルセーヤさん)
── 仕事と育児のバランスはどうですか?
つい先日転職が決まったのですが、今度はフルタイム(週37時間)ではなく30時間の契約です。妻がソーシャルワーカー組合の代表として週に50時間以上働いているので、私が家庭のことに時間を割ける余裕があるのはいいなと思っています。今までフルタイムで働いてきて、私も組合関係の仕事もしているので、それに加えて3人の育児と妻の忙しさを考えると、ちょっと多すぎたなと。
でも私たちの世代って、キャリアを築いていく時期と、出産や育児で忙しい時期がちょうど重なるじゃないですか。男性も女性も良い親でありたいという願いと同時に、仕事でも、もっと頑張りたいっていう時期でもある。私たちの親の世代とは、育児のあり方も仕事の仕方も違うんじゃないかと。今の時代はキャリアと育児という二つの分野で同時に上手くやらなくてはというプレッシャーが大きいように感じています。
仕事と育児のバランスについてもうひとつ言えることは、保育園を利用できることの心強さですね。もし保育園に入れないとなったらきっとすごく怒ると思いますね、なんでだよ!って。でもデンマークだと子どもは必ず保育園に入れるし、そのおかげで夫婦共に仕事と家庭のバランスが取れる。また、子どもがけがをしたときは何度も救急外来に連れていきましたが、病院は無料なので経済的なことを心配しなくてもいい。子育てって大変だし、カレンダーとにらめっこしながら予定を詰め込む日々ですが、こうした安心感があるのはいいですよね。預け先がなかったり、経済的な不安が多かったりだとつらいだろうと思います。
デンマークの首都圏郊外に暮らすアンジェリカ・イニーゴさん(29)とラスムス・シュウォーツさん(28)。アンジェリカさんは児童書やマンガを手掛けるイラストレーター、ラスムスさんはデザイン家具ブランドで商品開発を担当している。デンマークでは子どもが幼い頃には婚姻届を出さない人が多いが*2、彼らも同様に結婚という形を取らずに娘(エルヴィーラさん・6カ月)を育てている。そんな二人に話を聞いた。
アンジェリカさん(右)、ラスムスさん(左)とエルヴィーラさん(中央)。
(撮影:ラスムス・シュウォーツさん)
──ラスムスさんは10カ月の育休を取得されたと聞きました。職場での反応はどうでしたか?
ラスムスさん:(以下ラ)私のような例は初めてだったらしいんですが、制度なども色々と調べてくれて。とても良かったです。上司に「長い育休を取りたいんです」と言ったら「全然かまわないよ」と。スウェーデン人の上司だからかな、慣れているんでしょうね。でも10カ月も取るとは思っていなかったみたいで(笑)。ただ同僚の中には、「なぜ母親が取得しないのか、母親は子どもと一緒に過ごさないのか」と聞いてくる人もいましたね。
──ラスムスさんが10カ月育休を取り、アンジェリカさんが産後早い時期から働くというスタイルですよね。
アンジェリカさん(以下ア):出産前の4週間と、産後の2週間は私が取得しなければいけないんですが、個人事業主なのでそれ以外の期間は彼に全て譲ることができるんです。
ラ:早産になったので、産後6週間は二人での育休になりました。その後は私だけで、アンジェリカは自宅で仕事復帰しました。
──娘さんは初めてのお子さんですが、ラスムスさんが長期の育休を取ることはどのぐらい前から決めていたんですか。
ラ:子どもが生まれたら男性には2週間の育休があります。でも、たった2週間で娘のことが分かるようになるとは到底思えなかったんです。それで、早いうちからどうすれば育休を長く取れるか調べ始めました。それに、アンジェリカは個人事業主で、出産で会社をたたむわけにもいかないので、彼女が働き、私が育休を取ることでバランスを取ってみようという話になりました。
ア:普段から私たちは対等な関係だと感じています。子どもの頃からそんなふうに育てられてきましたし。だから娘にとって同じように一番大切な存在になれればと。それでかなり早い時期から調べていました。
──アンジェリカさんが妊娠中から、「共に育児に関わる」ということが始まっていたのですね。
ラ:健診や両親学級などは全て二人で行きました。
ア:そこで気づいたのは、出産に関するあらゆることが母親のみに向けられているということです。連絡も私にだけ、健診で名前を呼ばれるのも私。ラスムスも同じ親として参加しているのにです。
──それは考えたこともなかったです。ちなみに私は健診などは全て一人で行きました。
ア:一人ってつらいこともあると思うんです。診断で何か言われても、一人だと混乱するかもしれない。全部きちんと聞けたかなとか、妊婦ってだけでも不安なのに。だから二人でいられるのはいいなって。健診で言われたことをお互いの視点で話し合ったりもできます。
ラ:それにもともと二人で子どもをつくろうと決めたので。だから私もいます!という気持ちはありましたね。
ア:もしかすると、母親が一人で妊娠に向き合うから、気づいたら子どものことは私しか分かっていないと感じることになるのかなと。健診などでも父親は母親と対等に扱われていないので、よほど積極的に関わろうとしないかぎり、自分はあまり重要ではないと感じてしまう男性は多い気がします。私たちはそこはもう意識して、二人でやるぞと決めていたので。
デンマークの公園の様子。(イメージ写真)
──アンジェリカさんは自宅で仕事をされているとのことですが、普段の様子を教えてください。
ア:初めの頃は娘が本当によく寝てくれたので、仕事復帰はとてもスムーズでした。彼が娘のことや家事をしてくれるので、仕事に集中できるんです。
ラ:娘がぐずって、なかなか眠れないときは交代であやすこともありますよ。
ア:彼も私も同じことができると分かっているので安心できます。仕事の時間はきっちりと区切れるわけではないですが、コア時間はだいたい同じで、その前後に延びることもあるというか。
──お話を聞いていると、子育てをチームのようになさっている感じが伝わってきます。
ラ:私が行き詰まったら、彼女が仕事中でもちょっと代わってくれる?と言えるんです。そんな環境での育休は楽ですよね。いつでも二人だと思えるから。でももし一日中一人きりで育児をしていたら、つらいと思います。
ア:昼間も夜中も二人でできるから、いい親でいられるというか。十分休息も取れますからね。同じぐらい娘のことが分かっているのでとても楽なんです。そこに余裕が生まれるんですよね。
──ラスムスさんは長期の育休を取得する上で、キャリアへの影響などは考えましたか?
ラ:育休に入ってからよく考えるようになりました。でもその度に思うのは、これで良かったということです。10カ月って40年ぐらい働くと考えるとすごく短い期間じゃないですか。だからこれは絶対正しい選択だったって。娘は私たちにとってずっと一緒にいる存在ですからね、共に時間を過ごしたい。「そんなに長い間休んで、仕事はどうするつもりなんだ」と言われたこともありますが、そんなときは、「女性の同僚が育休を取るときと同じですよね」と言うようにしています。
──育休後はどのように働きたいと思いますか?
ラ:仕事はフレックス制で出社時間などに融通が利きます。その便利さは今後も使っていきたい。なるべく生活に合わせられるように仕事を調整したいなと。休みの期間だけでなく、日常的に娘と過ごす時間を持ちたいと思っています。
ア:私もイラストレーターとしてキャリアを積み上げていきたいという思いもあるから、お互いどうありたいか、そのためにどうすればいいかを話し合います。チームなんですよね。それぞれがどうしたいかを理解し、そのために何ができるかを話し合って試していく、そんな感じです。
デンマークの男性たちは、育休後も積極的に育児に関わり続ける人が多い。保育園への送り迎え、お互いの子どもたちを一緒に遊ばせるプレイデートのアレンジ、誕生日会の企画、学校での保護者活動、三者面談への参加、人によっては私の夫のように週に1、2回は仕事を夕方4時で切り上げ、子どものスポーツ活動のコーチを引き受けるなど、さまざまな場面でその姿を目にする。私もわが子の友人の父親らとプレイデートなどのさまざまな連絡を取り合ってきた。道ですれ違えば育児話で盛り上がることも少なくない。日々子育てに関わっているからこそ見えてくるたわいもない出来事から、子どもの成長への思いなど、彼らと交わす言葉は深く、多様だ。父親たちからは、人生は仕事だけではなく、積極的に子どもの成長に関わっていたいという意気込みのようなものを感じる。
少年サッカーの監督も父親が受け持つ。(撮影:沢広 あや)
これは、日本のように長時間労働が一般的ではないデンマークの父親には、子どもと過ごせる多くの時間があること、そして親が性別にかかわらず子育てに関与することが求められていることとも関係しているだろう。保育園や学校でも親の積極的な関わりが求められ、休暇の時期にも、たとえ保育園や学童保育が開いていても、時には子どもを長く休ませ、家族と過ごすことが前提とされる。
子どもたちの日常も日本に比べると緩やかだ。スポーツや音楽、演劇といった余暇活動に参加する子も多いが、エリートを養成するという考え方が一般的ではなく、趣味を楽しむ程度がほとんど。受験もなく、学校の試験や成績評価も卒業前の2年間のみ。13歳からは短時間のアルバイトもできる。休暇期間には宿題もなく、しっかり休む。そんな時間を子どもの頃から経験し、大人になっていく。
親が負担する教育費も非常に少なく、むしろ毎年数週間の夏休みに家族旅行でどこへ出かけるかを考えることが大きなプロジェクトになっている。そんな環境では、親が子どもと過ごす時間は長く、どんな時間を共に過ごしたいか考える機会も多い。
とはいえ、男性の育休取得や積極的な子育てへの関わりには、都市部と地方、また男性の職業によって差があることも指摘されている。男性の古いジェンダーロールが子育てへの深い関わりをいまだに阻んでいることもあるのだそうだ。だがこうしたことが、国の制度や職場環境の後押しによって少しずつ変わってきている。
核家族で夫婦共に働くことが一般的な現代社会では、子どもが日常的に深く関わりを持つ大人はそれほど多くない。だからこそ、父親も母親と同じように子育てに深く、長く関われることの意味は大きいだろう。
日本でも育休を取得したいと考える男性は多いという。統計では、北欧の男性とそれほど変わらないのだそうだ。多くの男性が子どもの成長に深く長く関われる日が来るよう、北欧の例が少しでも参考になればうれしい。
*1 フィンランドに限らず北欧諸国では同性カップルが子どもを持つことも多く、育休についても「両親」または「出産した親」「もう一人の親」といった表現が用いられる。同性カップルや養子縁組家庭も同じように育休が保障され、一人親の場合は、両親に振り分けられる期間を全て取得できるのが一般的である。
*2 デンマークでは、共同親権が前提で、婚姻関係がなくても父親も母親同様に親権を持つことができるため、子どもを持つことと婚姻が必ずしも結びついていない。日本では「結婚→子ども」という流れが一般的だが、デンマークでは子どもが生まれた数年後に夫婦関係を今後も誓い合いたいと気持ちが熟してから結婚するカップルも多い一方で、それまでに夫婦関係を解消する場合もある。
沢広 あやさん(Aya Sawahiro)
京都府出身。2003年よりデンマーク・コペンハーゲン在住。王立図書館大学で司書資格を取得後、公共・学校図書館で児童サービスを担当。現在は児童書専門店に勤務しながら、翻訳者、ライターとしてデンマーク社会、ジェンダー、子どもの本に関する発信を続けている。訳書にセシリエ・ノアゴー著『デンマーク発 ジェンダー・ステレオタイプから自由になる子育て』(ヘウレーカ刊)ほか。