大日本住友製薬は、精神疾患を抱える人々の就労の場づくりを目指し、特例子会社ココワークを設立した。現在は、精神障がいがある7人を含む11人のスタッフが在籍。大日本住友製薬の研究所敷地内にガラス温室を設置し、フリルレタスやルッコラなど葉物野菜の水耕栽培を行っている。クリーンな環境で育った野菜はえぐみが少なく、おいしいと評判だ。ネットのほか、大阪・兵庫のスーパーマーケットで販売、レストランやホテルでも使われている。
今回のバディは、ココワークを立ち上げ、社長を務める渡辺晶子氏と、その思いに共感し、大日本住友製薬の人事担当執行役員として実現をサポートしてきた樋口敦子氏だ。
会社設立のきっかけは、渡辺氏のアイデアだった。「ファーマコビジランスに長く携わり、2017年4月、そのデータ入力を専門に行う子会社の社長に就任しました。新しいポジションに就いたこともあり、何かこれまでとは違う形で貢献できることはないか。思い出したのが、あるMRに聞いた話でした」と、渡辺氏は振り返る。精神神経領域は大日本住友製薬の注力分野の1つだが、患者は薬が効果を発揮して症状が安定しても、なかなか就職する先がないという現実がある。就職しても、職場の理解不足などで再発するケースも少なくないのだ。
「いろいろ調べるなかで、農業の持つ癒やし効果を知り、“これだ!”と。ほとんど直感でした。なにせ農業はもちろん、障がい者雇用の知識もなく、法定雇用率や特例子会社についてもよくわかっていませんでしたから(笑)」(渡辺氏)
ノウハウも人脈もゼロの状態から事業プランを固め、経営層への提案では何度も差し戻された。しかし、当時広報を担当していた樋口氏は、最初からこの企画に共感し、側面から支援した。
「製薬業としての強みを生かしながら、本業の薬だけでは届かない部分を支援する。精神障がい者の職場復帰の難しさはよく知っていたので、働く場を作ることは、当社だけでなく社会にとって意義のある取り組みだと思いました」