「人生100年」と言われる時代。会社員であっても副業を含む多様な働き方をする人が増え、ますます「個」の力が重要になるとみられています。そんな中、81歳の今も現役の美容家としてイキイキと活躍しているのが、川邉サチコさん。人生100年時代を軽やかに生きる大先輩として、長い人生を充実させるために必要なこと、20代30代のうちに心がけておくといいことなどを伺いました。
目次
目の前の仕事に真面目に取り組めば、チャンスは巡ってくる
定年後も輝くため、経験を積み能力の土台を作っておく
隣の席なのにチャットで会話するなんておかしい
「活字を読む」は最良のイメージトレーニング
81歳、仕事の幅はこれからもどんどん広がっていく
目の前の仕事に真面目に取り組めば、チャンスは巡ってくる
──川邉さんは22歳で結婚。婚家は美容業の老舗で、義母は当時の最先端エステの技術を学んだ美容家のパイオニアだった。「美容師になる気はない」と宣言して結婚したというが、義母に連れられて現場の手伝いをするうちに、「気がつけば美容の現場で修業をさせられていた」という。
若いうちは特に、与えられたことに一つひとつ、真面目に取り組むことが大切。ちゃんと1つ、やり遂げるというのが重要なんです。そこから学べることはものすごく多いから。
若いときはつい焦ったり、すごい人を見て「自分も早くああなりたい」と思ったりするものだけど、焦りや欲望ばかりが先行してもうまくいかない。目先の仕事がつまらないと感じることがあっても、真面目に取り組めば絶対に損はない。振り返ってみると、自分の力になっているもの。
私も、20代の頃は美容の仕事が嫌でしかたなかった。義母を手伝いながら、「いつ辞めてやろうか」と毎日思っていたくらい。でも、いま81歳になっても、こうして美容の仕事を続けている。
実は、今までに2度ほど美容の仕事からいったん退き、他の仕事にチャレンジしたことがあるんです。本格的に器や着物のデザインを始めて、デザイン事務所を立ち上げたこともあった。大好きな分野だったし勉強もしたけど、やっぱり上には上がいて、チャレンジした結果「自分にはこの分野の才能がない」と気づくことができました。
それに、美容の仕事は辞めたはずなのに「あなたじゃないとできない仕事だから」と何度も周りに声を掛けられて、美容から離れられなかったんですね。結局、周りの求めに応じて、背中を押されるかたちで、気づいたら60年近く美容の世界でずっと生きてきた。
「あなたじゃないとできない仕事」という言葉、当時はあまり嬉しくなかった。最初は辞めたいと思っていたし、ディオールやサンローランなどのファッションショーでヘア・メイクを任されるようになり美容の仕事がどんどん増えても、やりがいとか醍醐味を感じられずにいました。
正確に言えば「あまりに忙しくて感じる暇がなかった」。でも、「あなたじゃないと」と求められることはありがたいし、これが「チャンス」というものなんだとは思っていました。これに乗れば、自分の視野を広げ、引き出しを増やしてくれるだろうと。